- 著者
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北原 徳久
- 出版者
- 日本草地学会
- 雑誌
- 日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.4, pp.384-388, 1985-02-25
わが国の主要な寒地型牧草であるオーチャードグラスとトールフェスクの自然下種に対する適応性の差異を明らかにし,自然下種効果を高めるための利用開始時期を決定する基礎資料を得るため,両草種の落下種子量の経時的変化とその発芽特性を比較,検討した。試験は,中国農試畜産部(島根県大田市)で実施したもので,結果の概要は以下のとおりである。1)m^2当たり種子生産量は,トールフェスク96.69>オーチャードグラス69.0gであったが,m^2当たり生産種子粒数は,逆にオーチャードグラス129×10^3粒>トールフェスク63×10^3粒であった。稔実率については,両草種とも約45%で,差がみられなかった。2)オーチャードグラスの自然下種粒数の経時的パターンは,6月下旬〜7月上旬に大きなピークを示し,以後低下するが,8月上旬に再び小さなピークを示す2山型であった。トールフェスクのパターンも類似していたが,オーチャードグラスに比べて最大のピーク時期が少し早く,8月のピークも小さいものであった。3)両草種の6月下旬〜7月中旬(梅雨明け前)までの落下種子の発芽率は,オーチャードグラス18〜29%,トールフェスク81〜90%であったが,発芽・定着に好適な9月上旬には両草種とも約90%以上の発芽率を示した。4)以上,中国地域の気象条件では,自然下種後の利用開始時期は,自然下種粒数の推移からみて,オーチャードグラスでは7月中旬以降,トールフェスクでは7月上旬以降であると思われる。また,オーチャードグラスは,トールフェスクに比べて種子粒数が多く,梅雨明け前の発芽率が低いため,定着に好適環境となる秋期の発芽・定着が期待できると考えられる。