著者
木下 郁夫
出版者
愛知県立大学
雑誌
紀要. 地域研究・国際学編 (ISSN:13420992)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.199-220, 2007

国際政治の「現実」とは何であろう。政治学は規範を説教するぼかりでなく、「現実」、すなわちありのままの実存を対象としなけれぼならない、とエドワード・ハレット・カーはいましめた。『危機の20年-国際関係序説-』は彼の講義の学生どころか、国際関係論を志すあらゆる者にとり序説でありつづけている。ところが、彼の「現実」には二重の意味があった。実存以外のもうひとつの意味は、力と国家を国際政治の本質とみることであった。世論、知性、自由放任、調和、国際主義、道徳は非本質とされ、実存しない、あるべき理想境の「ユートピア」とされた。さらに、これらを重視する政策まで「ユートピアニズム」と命名され、国際連盟や諸条約がひとくくりにされた。ユートピアニズムはカーにとり、現実主義のひきたて役でしかなかった。彼は歴史のあと知恵で、つごうのよい概念と発言のよせあつめでわら人形をつくり、ノックダウンすることができた。アドルフ・ヒトラーの登場と第二次世界大戦の勃発で、力と国家の全盛期ははじまっていた。「幼稚な」ユートピアニズムと「成熟した」現実主義の二分法は、説得力あるレトリックにおもわれた。しかし、連盟も諸条約も不成功の諸提案も、まぎれもなく歴史事実であった。実存しても(彼の定義する)本質でなければ非現実、とするカーの論法はダブル・スタンダードであった。本論文ではユートピアニズムのレッテルをはられた諸現象を解剖する。まずは、法学的解剖から着手したい。

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こんな論文どうですか? ユートピアニズムの解剖 : 『危機の20年』と大戦間期の国際仲裁(木下 郁夫),2007 https://t.co/VtmRV0oaCF
こんな論文どうですか? ユートピアニズムの解剖 : 『危機の20年』と大戦間期の国際仲裁(木下 郁夫),2007 https://t.co/VtmRV0oaCF
http://t.co/gvmZJQSRay そういや、『危機の二十年』を最近になってようやく入手した。

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