著者
上原 潔
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.21-39, 2006-12

本稿の目的は、エバハルト・ユンゲルが『世界の秘密としての神』において、無神論をどのようなものとして分析し、それに対していかなる神学を構築しようと試みたのかを理解することにある。ユンゲルによれば、現代を特徴付けている無神論の萌芽は近代にある。そこでは、人間的自己が存在、非存在を決定する「基体」となることで、絶対性をその本質とする神の実在が思惟不可能になるというアポリアが生じた。現代の無神論を規定しているこのアポリアを解消すべく、ユンゲルは絶対性という神の本質を批判的に解体する。ユンゲルは、神の絶対性をキリスト教的な神理解ではなく、存在者の連関を遡ってその根拠である神を措定するような形而上学の神理解、つまり「存在神論(Ont-Theo-Logie)」に由来するものであると考える。それに対し、キリスト教はナザレのイエスにおいて神が自己を啓示したという認識から始まる。この神理解によれば、神は決して世界の彼方にのみ存在しているのではなく、むしろ、世界に「到来」する者であり、それ故に経験や思惟の対象となり得るのである。このようにユンゲルは啓示神学を構想することによって、無神論に対抗するのである。The aim of this paper is to clarify Eberhard Jüngel's analysis of atheism and his attempt to construct theology against it. According to Jüngel, atheism that characterizes today's world has begun in the modern period. At the dawn of the modern period, human Self became "Subject"(subjectum)that judged what did and did not exist. This resulted in an aporia that the existence of God whose essence is absoluteness could no longer be thinkable. In order to solve this aporia Jüngel destructs God's absoluteness critically. He thinks that this absoluteness stems from not Christian, but metaphysical comprehensions of God. Metaphysics traces back a chain of beings to God, their ultimate source (Onto-Theo-Logie). In contrast, Christianity starts from God's Self-Revelation in the man Jesus of Nazareth. According to this understanding, God not only transcends the world,but comes into the world. For this reason, God can be an object of thought and experience.In this way Jüngel confronts atheism by constructing a revelation theology.論文(Article)

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