著者
海野 昭史
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学一般教育紀要 (ISSN:13413589)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.19-38, 2006

Cleanness(Purityと題されていることもある)は、Patience同様に、説教の例話として『聖書』、特に『旧約聖書』の物語を敷衍して語っている。Patienceは『旧約聖書』の中の「ヨナの書」(Ionas)を単独に扱っているのに対し、Cleannessは『旧約聖書』の複数の物語を取り上げている。したがって、両作品には、構成、それに伴う内容の取り扱いに差異が見られる。それで、今回は、Cleannessに見られる「内」と「外」を表すコントラストの機能を中心に考察し詩人の詩作の意図を論じてみたい。この作品には、タイトルに示されているように'clannesse'、またその反意語である'unclan-nesse'、およびこの2つの語に関連する表現が散りばめられている。それに伴い、'clannesse'の範疇に属するノエ、アブラハム、ロト、ダニエルそしてキリスト、'unclannesse'の世界の人々に属するルシファー、アダム、箱舟に入ることのできない人々、ソドムとゴモッラの人々、およびナブコドノゾル王の息子のバルタッサル王がそれぞれ対照的に登場している。ただ、ナブコドノゾル王については、状況によって'clannesse'と'unclannesse'の両面が見られる。こうしたコントラストに付随して見られる「内」と「外」の機能は作品の中で重要な役割を担っている。たとえ「外」を表す表現が使われていなくとも、「内」を表す表現が使われていれば、「外」を表す内容が暗示されている場合がある。また、その逆も有り得る。

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