著者
山下 進
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.193-200, 2007-12-31
参考文献数
15

【背景】尿中の3-メチルヒスチジン(3-methyl histidine,3-MH)は筋タンパク異化の程度を反映する指標とされている.近年ではより短時間のタンパク代謝を評価する方法として,血中の3-MHが用いられることがある.しかし,これまでにヒトでの測定報告は少なく,その基準値は決められていない.【目的】健常成人における血中3-MHの基準値(範囲)を求め,重度侵襲患者の血中3-MHと比較する.そして侵襲時,タンパク異化の指標と成り得るかを検討する.【方法】健常成人101名の血中3-MHを高速液体クロマトグラフで測定した.重度侵襲患者6名の血中3-MHを経日的に測定し,基準値と比較した.また,血中アルブミン,急性相タンパクおよび尿中3-MHを経日的に測定し,タンパク代謝を評価した.【結果】健常成人の血中3-MHの基準範囲は0.91〜5.59nmol/mlとなった.男性では1.22〜6.26nmol/ml,女性では1.09〜4.41nmol/mlであり,男性が有意に高値を示した(p<0.05).筋肉量による補正のために3-MH/血中クレアチニン値(3-MH/Cre)を算出すると,男女差がなくなり,健常成人全体では0.13〜0.53nmol/μg Creが基準範囲となった.重度侵襲患者では健常成人に比して血中3-MH/Cre値は有意に高値であり(0.59±0.12 vs 0.33±0.10nmol/μg Cre,p<0.05),筋タンパクの異化亢進が示唆された.重度侵襲患者の血液では3-MH/Creとアルブミン,急性相タンパクにそれぞれ相関を認めなかった.【結論】健常成人の血中3-MH/Creの基準値を設定した.筋肉量の差があるために男女別の基準値か,クレアチニン値で補正した値を用いる必要がある.重度侵襲患者では明らかに血中3-MH/Creは上昇し,タンパク異化亢進が強く示唆された.

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