著者
今野 洋子
出版者
北翔大学
雑誌
北海道浅井学園大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13466194)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.81-96, 2002

現在,日本の性教育は,10代の望まない妊娠と中絶率の増加の問題等を解決できずにいる。一方,オーストラリアのセクシュアリティ教育は,斬新で効果的な教育として,世界的に注目されている。本稿は,セクシュアリティ教育の中の「避妊教育の展開」に着目し,日本の性教育との比較検討を試み,問題解決のための日本の性教育の方向性について考察する。現在,日本の性教育では生命の誕生に関わることが多いが,子どもの心理的発達や子どもの視点を無視した性教育となっている。また,青少年の性行動や性意識の実態をみると,避妊について教えないことは実態と乖離した教育といえる。性に関する全てのことがらが,その子どものものであり,その子どもが培っていくべきものである。子どもが性と生について考え,自己決定するための教育の展開について,セクシュアリティ教育に学ぶ意義は大きい。特に,「避妊教育」は,子どもが自己のセクシュアリティについて考え,選択し,自己決定していく過程を必要とする。子どもの生きる力に期待しつつ,おとなとしての価値観を押しつけることなく,子どもが主体的に考え選択できる能力を持てるような教育を,避妊教育を含め推進していきたい。

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