- 著者
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水谷 研治
- 出版者
- 中京大学
- 雑誌
- 中京大学経済学論叢 (ISSN:09152555)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.1-8, 2000-03
財政の大幅な赤字が続いている。その結果、国の借金残高は膨大な金額となってしまった。財政問題を解決するためには、徹底した支出の削減と収入の増大しかない。それによって赤字をなくするだけではなく、黒字にし、黒字によって債務を削減しなければならない。ところが余りにも膨大な赤字であり、赤字を消すことは至難な技である。そのうえ、過去に作り上げた借金を返済することなど、とうてい、できることではないという意見がある。そこで財政改革の方法としてインフレーション待望論が出てくる。インフレーションによって借金の実質的な価値を減らし、それによって過大な借金の重荷から開放されようとするわけである。ところが、借金残高がある程度の規模を超えるとインフレーションに伴うマイナス面が大きくなり、問題の解決にはならなくなる。インフレーションに伴う金利の上昇によって借金が膨らんでいくからである。すでに我が国の債務残高は限界をはるかに突破している。それでも現在、問題が表面化していないのは、異常なほどの低い金利水準のためである。将来、インフレーションになれば金利水準が上昇し、一挙に問題が表面化して国の借金はさらに急激に増大していくと考えられる。そのような事態に至る前の段階で国の借金残高を大幅に削減していくことが不可欠と考えられる。