著者
楠 明子
出版者
東京女子大学
雑誌
英米文学評論 (ISSN:04227808)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.59-74, 2004

1604年11月1日、OthelloがWhitehall Palaceで上演された時、当時Queen Anneの側近だったLady Mary Wroth (c. 1587-1653)が観劇したのはほぼ確実といえる(Miller:"Engendering Discourse:"170)。彼女は自らも牧歌劇Love's Victory (c. 1620)を書き、1605年1月、宮廷での十二夜の祝いにはQueen Anne主催のBen Jonson作The Masque of Blacknessの上演にも参加したほど演劇好きだった。彼女の恋人はShakespeareのパトロンのWilliam Herbert (1580-1630)、第三代Earl of Pembrokeであったから、Shakespeareと面識があった可能性も高い。Wroth作の散文ロマンスUrania I・II部、戯曲Love's Victory、そしてUrania Iと合本の形で刊行されたソネット詩集Pamphilia to Amphilanthusには、Shakespeareの作品を想起させる箇所が多い。本論では、Othelloを強く意識して書かれたと思われるUrania第II部のなかのエピソードである、主人公のパンフィリァ王国女王のPamphiliaと、彼女の夫となるタータリア王Rodomandroの話を取りあげる。Uraniaの特徴の一つは、散文ロマンスでありながらストーリーが登場人物の会話体で進行していく部分が多いことである(Miller:"Engendering Discourse:"155-6)。ここにもWrothの演劇への関心が窺える。また、この独特の形態のおかげで、ロマンスと演劇というジャンルの違いは2作品を比較するのにあまり大きな支障とならない。両作品における「黒」の表象を比べてみることで、イギリス・ルネサンスの白人女性の異文化に対する認識を、主にジェンダーの観点から考察する。Wrothが男性作家のつくりあげた当時の文学伝統にいかに自らの作品を順応させようとしたかではなく、彼女がOthelloという作品のどのような点を問題として捉え、Uraniaのなかでその点をいかに書きかえているかに焦点を当てる。その結果、Othelloのどのような面が照射されるかを考えてみたい。

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こんな論文どうですか? What is the cause that you thus sigh? : UraniaとOthelloにおける異文化認識(楠 明子),2004 https://t.co/vDJcf8PXY0
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