著者
岩間 一雄
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.27-34, 2008-05

憲法25条とその精神を体した生活保護法は、勤労原則と必要即応原則との二つの原則を含んでいる。勤労原則とは、人はすべて労働すべきものであり、それによって生計を立て得ない部分について、保護の手を差し伸べるという原則である。エリザベス救貧法の根本原則であるといえる。対して、必要即応原則は、人間存在そのものに生存権を承認し、無条件にすべての人間の生存のために必要とするところを保障するという原則である。障害者、療養者、老人、シングルマザーなどに対する援助は、まさにこの原則によるといえる。すべての人間のために生存の条件を確保しようとする思考は、現代の「基礎収入」の思想である。憲法25条は、かくて、旧い勤労原則を保持しつつ新しい「基礎収入」原理を含んでいる。現代の第二の朝日訴訟は、旧い原則から新しい原則への転換という巨大な歴史的展望の中に立つものである。

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