著者
西沢 祐介 田中 寛人 吉田 勝俊 佐藤 啓仁
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
Dynamics & Design Conference
巻号頁・発行日
vol.2006, pp."108-1"-"108-5", 2006-08-06

非線形振動系とその複製に共通の不規則外乱を与えると,両者の応答が同期する現象が知られている.任意の初期値から同期状態へ到達するまでの収束時間は,パラメータ条件の選び方に大きく依存するが,未検討である.そこで本報では,このような収束時間のパラメータ依存性を,統計的等価線形化法によって定量評価してみる.具体例として,ランダム調和入力を受ける系(式(Al))と,狭帯域ランダム入力を受ける系(式(A2))を取り上げる.x+cx+kG(x_0+x;μ)=Q+P_<cos>(ωt)+sw(t) (A1) {x+cx+kG(X_0+x;μ)=Q+F(t) F+2ζω_nF+ω^2_nF=sw(t) (A2) G(x_0+x;μ)={x_0+x+μ (x_0+x&le;-μ) 0 (-μ<x_0+x<μ) x_0+x-μ (x_0+x&ge;μ)以下の数値例では,式(A1)に対してc=0.04, k=1,0, Q=0.3, P=0.2,μ=0.7, s=0.02とする.図A1は,式(A1)から求めた同期誤差の見本過程の一例を表わす.ω=1.07に対する図A1の(a)の結果では同期までの収束時間はT=195程度だが,ω=0.81に対する図A1の(b)では, T=18973程度を要する.このように,同期に至る収束時間にはパラメータ依存性がある.同期可能なパラメータを推定する常套手段として,式(A1)の系の最大リアプノフ指数を入力周波数ωの関数としてプロットしたのが図A2である.先ほどの条件ω=1.07,0.81に対する最大リアプノフ指数はそれぞれλ&ap;-0.102,-0.101となり,収束時間の変化は捉えられない.そこで,積率微分方程式を用いて式(A1)の分散応答を求めた結果を図A3の上段に示す.ω=0.77,0.92を跳躍点とする跳躍履歴現象が見られる.図A1の収束時間と比較すると,収束時間が短い条件ω=1.07は跳躍履歴現象の外部に位置し,収束時間が長い条件ω=0.81では内部に位置している.すなわち,積率微分方程式の跳躍履歴現象の有無によって,同期への収束時間を評価できる可能性が明らかになった.この仮説を確かめるため,図A3の下段に,サンプルiの初期値x_kに対する収束時間をT_i(x_k)とするときの平均収束時間〈T>= 1/(MN)Σ^M_<i=1>Σ^N_<k=1> T_i(x_k)を示す..M=100, N=5×5とした.収束時間が長い条件ω=0.81は,積率微分方程式の跳躍履歴現象の発生領域に含まれており,式(A1)の積率微分方程式の跳躍履歴現象は,同期の収束性が悪化するための十分条件を与えている.なお,式(A2)の場合には逆に必要条件を与える.

言及状況

はてなブックマーク (1 users, 1 posts)

収集済み URL リスト