- 著者
-
石岡 靖
- 出版者
- 日本顎口腔機能学会
- 雑誌
- 日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.75-81, 2008-02-28
- 参考文献数
- 14
神に食を供えて,神と共に戴く神人供食,食を介した隣人交流が,食の原点と考える.食には人類の進歩と社会の構造・機能と連携して形成される必然性があるので,その世代の住民生活を表現している.食に感謝するお祭り,五節句,四季の24節等は,自然が教える諸々の情報で,季節のおせちを戴く風習が伝承されている.季節の葉に包んで保存食,香味を付けた桜餅,柏餅など先人の知恵は伝えたい.現在,世界の40%は手づかみの食事というが,日本には古くから箸文化がある.機能的,衛生的は勿論であるが,箸には食事の作法を確立した大きな功績が評価される.特に茶道,禅修行僧の食の作法は,広く食の礼儀と心,さらに,禅の心を伝えた要素として現在に伝えられている.料理は理(ことわり)を料(はか)る.食べる人が食べやすい心配り,心遣いが基本であることを示している.これが日本料理の心である.食初(くいぞめ)膳や歯固めの儀式は伝えたい食文化と考える.戦後の経済交流は食に大きく影響を及ばし,日本の食文化を混乱させる現象も見られたが,21世紀には,これらの風習を包含した情報の食文化がくると考える.