- 著者
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鳴海 史生
- 出版者
- 尚美学園大学
- 雑誌
- 尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, pp.23-36, 2007-11-30
本論は、モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》の通奏低音チェンバロにもっとも適した調律法を探る試みである。モーツァルトの鍵盤楽曲全般がそうであるように、《フィガロ》の通奏低音チェンバロにもまた、平均律はふさわしくない。なぜなら、モーツァルトが作曲の際に使用する調と転調の可能性をみずから制限し、それとの引き換えに鍵盤楽器の美しい響きを求めていたことは明らかだからである。したがって、われわれは歴史的な不等分律のなかから、このオペラのレチタティーヴォ伴奏に最適な調律法を探り出さなくてはならない。しかし、ラモー、ヴェルクマイスターIII、ヤングII、ヴァロッティといった、よく知られる歴史的調律法を採用することには、いくつかの難点がある。鳴り響きの美しさや演奏効果、および演奏上のさまざまな条件を勘案すると、ピタゴラス・コンマをF-C-G-D-A-E-B-F♯の7つの5度に割り振る「1/7調律法」が、《フィガロ》にもっとも適した方法として推奨できる。