10 0 0 0 OA 日本美術の素性

著者
河野 元昭
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.37-63, 2010-11

日本美術の美しさはシンプリシティーに求めることができる。まず初めに、その理由を材質と形式の点から考え、次にシンフ゜リシティーの内容について、直観的、心象的、装飾的、詩歌的、諧謔的の五つに分けて論じたわけである。日本絵画の特質は、一言でいってシンプリシティーである。そのもとになった中国絵画と比較することによって、はっきりと理解することができる。しかし、このような日本美術のシンプリシティーは、同時に圧倒的迫力やモニュメンタリティーに弱いという欠点を生むこともないではなかった。明治時代の小説家二葉亭四迷が、日本人の大和魂というものは純粋であるけれども、徹底性を嫌うという欠点をも生んだと指摘していることは、きわめて興味深く感じられる。ところで、実をいうと、シンプリシティーは美術だけの特質ではなく、衣食住をはじめ技術・学問・文学・芸能・音楽・宗教など、日本文化全般にわたる特徴でもあるといってよいであろう。これらの場合も、単に簡潔純粋というだけではなく、複雑なものをそのように見せる意識が働いていたことを見逃してはならない。それでは、なぜ日本文化全体がシンプリシティーによって特徴づけられるのか、今後はこの問題を考えてみたいと思っている。その際ヒントになりそうなのは、近代の文豪島崎藤村が、日本に和歌や俳句の如く、ごく単純な詩形が発達してきた理由は、われらの心に経験することがあまりに複雑であるからではないかと指摘している点かもしれない。
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-16, 2016-03-31

日本では年間150以上のロックフェスティバルが開催され、 数日の開催期間で多くの観客を集め、 地域活性化にも、 ビジネス面でも成功する傾向にある。 本研究では、 2つのタイプのロックフェスティバルの違いを、 経済波及効果の視点で分析した。 郊外型の事例として 「MONSTER baSH2015」、 都市型の事例として 「VIVA LA ROCK2015」 の経済波及効果を算出。 その結果から、 地域に与える影響を考察し、 郊外型がより高額であることを明らかにし、 観客の来場意図へも言及した。
著者
竹内 誠
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.25-41, 2009-03

音楽理論は経験と習慣からその多くは組み立てられており、それが音楽経験の少ない学習者の理解の妨げとなっている。理解の妨げとなる理由は、理論の論理的説明が不十分なためである。この様な伝統的音楽理論の問題点は、論理を数理的に組み立てることによって解消が可能と思い至り、音楽理論の数理的考察を試みた。その結果、音楽理論を数理的な思考により再構築することは、音楽経験の少ない学習者の理解に有用なだけではなく、音楽の新たな表現の発見に繋がる可能性があることも確認できた。今回は、コード上のスケール(available note scale)を、コードの構成音から数理的に導き出すことを考察した。これにより、既成のスケールの他に、既成の枠以外のスケールを作り出せることから、実際の音楽に柔軟に対応が可能な理論であることが確認された。
著者
大木 裕子
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.18, pp.65-81, 2010-11

ストラディヴァリの生誕地でもある北イタリアのクレモナは、長年に渡る空白の時代を経たのち、20 世紀になって再び世界のヴァイオリン産地として復活した。産業クラスターを構成するクレモナのヴァイオリン製作者にとって、クレモナで製作する最も大きなメリットは、製作者同士のピアレビューと知識の交換にある。海外から製作者たちが集り国際的コミュニティとなったクレモナでは、現代のトップ・マエストロたちが中心的存在となってヴァイオリン製作者たちの技術を牽引している。クレモナのヴァイオリン製作者たちは、クレモナを一つの大きなヴァイオリン工房として捉えており、この協働意識が国際的な競争優位性をもたらすと共に、クレモナをヴァイオリン製作の世界的メッカする原動力となっている。クレモナのブランド戦略は、プロでも初心者でもない中間層ユーザーを狙ったもので、その市場は製作者たちの出身国に広がり、産業クラスターとして見事に成功した。
著者
田村 和紀夫
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.71-82, 2015-03-31

モーツァルトとダ・ポンテがボーマルシェの台本に加えたもっとも大きな変更は、伯爵夫人の2曲のアリアの追加だった。 騒がしいドタバタ劇の中で、これらの音楽は静寂な時をもたらし、個人の内面世界への展望を開く。こうしてオペラは新たなパースペクティヴを獲得することになった。モーツァルトはこれらの2曲のアリアでかつて作曲したミサ曲の旋律を導入し、 宗教的な世界へ接近した。 特に第2アリアでは 「アニュス・デイ」 から 「ドナ・ノビス」 への転換をそのままアリアに移し換えた。 これは 「祈り」 から 「行動」 への転換にほかならず、 伯爵夫人が現実を生きる決意の表現とするのである。 こうしてオペラ 『フィガロの結婚』 はフランス革命を準備した啓蒙主義時代が産み落とした作品から、 苦難多き現実世界を生きるあらゆる人と時代のための傑作へと普遍化されたのである。
著者
八木 良太 大塚 寛樹
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.22, pp.29-45, 2013-03

ライヴエンタテインメントビジネスほど不確実性の高いビジネスはない。なぜなら、このビジネスは、成否が人の嗜好という非科学的な要素に大きく左右され、常に自然災害や突発的事故などの予測不能なリスクにさらされているからである。本稿は、このリスクの塊のようなライヴエンタテインメントビジネスのリスクマネジメントについて考究する。具体的には、ライヴエンタテインメントビジネスのリスクを特定するとともに、リスクファイナンスの観点からコンサートプロモーター(コンサート企画運営会社)のリスク対応について分析と考察を行う。本稿から、コンサートプロデューサーによる戦略的な保険選択の実践が、コンサートプロモーターのリスクファイナンスの成功の鍵を握ることが明らかになる。
著者
八木 良太
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17-36, 2012-03

本稿は、企業のイノベーション戦略の選択における産業構造分析の有用性について論じている。具体的には、ファイヴ・フォース分析と産業進化の4類型という2つのフレームワークの理論的な貢献と限界について論じ、産業構造分析の理論的展開を整理しつつ、産業進化の4類型による音楽産業の産業構造分析を行う。その結果、産業進化の4類型が、ファイヴ・フォース分析の理論的問題点を補完するとともに、企業による最適なイノベーション戦略の選択に必要な3つの要素((1)産業の変化パターンの理解、(2)産業の発展の方向性の予測、(3)経営資源の陳腐化の状態の把握)を提供するフレームワークであることが明らかになる。そこで、これら3つの要素を手がかりに、現在の音楽産業の企業にとって有効なイノベーション戦略について考察する。
著者
鈴木 常恭 Tsuneyasu SUZUKI 尚美学園大学芸術情報学部
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.12, pp.37-55, 2007-11

テレビジョン番組は、ほとんどが先行する演劇、大衆演芸、歌劇などの実演形式、そして映画の表現形式を敷衍したものである。しかし、クイズ番組は放送メディア(テレビ、ラジオ)が、独自に開発した数少ない番組形式である。この番組形式は、テレビが登場して以来いまも多くの視聴者を獲得している。そして、この番組形式は、いま世界中のテレビジョン放送が共有する主要なジャンルとして位置づけられている。この研究ノートでは、テレビ番組研究の一貫として、はじめにテレビ番組におけるジャンルの生成と確立に言及し、これを踏まえクイズ番組の構成要素、出題と知、演出そして受容のされかたを番組の変遷を踏まえ考察する。
著者
三輪 亜希子 田代 順
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.87-100, 2016-03-31

筆者の所属するダンスカンパニー〈プロジェクト大山〉は大学という教育機関から発足した。 卒業から様々なターニングポイントを経過し、 発足10年目を迎える現在も活動の幅を広げながら日本のダンスシーンにおける地位を確立し始めている。〈プロジェクト大山〉はコンテンポラリーダンスのカンパニーである。 コンテンポラリーダンスが日本に根付いてから30年あまりの時間が経過した。 同時代の感性を取り入れ, 斬新で新しい演出に富んだ芸術として瞬く間に90年代のダンスシーンを彩ったコンテンポラリーダンスであるが、現在は、手法や振付がある程度確立され、新しさが生まれにくいと認識されるような過渡期にもさしかかっているといえる。 また、 日本ではダンスが職業化していないという事情から、日本における多くのダンスカンパニーは契約や組織規定のない緩やかな結束で成立している傾向がある。こうしたことを背景に、この論文では、日本のダンスカンパニーの生成に関してメンバーの言葉を読み解くことで考察していく。今回を初考とし、さらなる考察の展開を図る計画である。
著者
川浦 義広
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.41-62, 2016-03-31

ジェルジ・リゲティ (1923-2006) は、 20世紀後半を代表するハンガリーの作曲家である。 彼の音楽は 「音響の変化のプロセス」 を音楽の時間構造と結びつけたという点で非常に独創的であり、 1960年代には「ミクロポリフォニー」という語法を確立した。 その後一貫して音響空間や時間構造への試みを行うが、 1980年代以降になると和声的な書法や旋法を用いた書法など過去の時代の音楽にみられた書法に回帰する。 また、 同時にミニマリズムの影響からポリリズムやポリテンポなどの多層的かつ複雑なリズム書法を用いるようになる。 本論文では、 リゲティの作風の変遷を考察することによってリゲティの音楽的関心やそれに伴う作曲語法の変遷を明らかにし、晩年に書かれた作品である 「ヴァイオリン協奏曲」の分析を通して和声的な書法や過去の書法が彼の音楽においてどのような効果を持っているのかを考察する。 また、このような考察は、過去の音楽書法と現代作品の書法の関連性について検証することにもなるといえる。
著者
小椋 久雄
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.21-34, 2015-03-31

今日の映像作品に於いてカメラワークの無い作品はない、つまりカメラの動かない作品はないと言っていいだろう。 では何のために、どういう効果を狙ってカメラは動くのだろうか。 本論では、「移動撮影 (パンを含む)」について実際に公開された海外の映画のシーンもとに解説し、さらに筆者が監督した映画 「世にも奇妙な物語 映画の特別編・結婚シミュレーター」(東宝配給2000年公開)を題材に具体的に検証および解析をしていく。
著者
小林 仁
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.63-73, 2016-03-31

1927年に初演された 「ショー・ボート」 は、 「それまでのミュージカルの概念、 常識を破った画期的なもので、 今日アメリカのミュージカル史に新しい時代の到来をもたらした歴史的な作品」と位置付けられている。 1 脚本・作詞のオスカー・ハマースタインII世と作曲のジェローム・カーンは、エドナ・ファーバーによる原作の小説に描かれた人種問題を始めとしたアメリカの現実的、社会的問題を、登場人物のキャラクターにおけるその独創的な脚色、および黒人音楽であるブルースをとり上げるなどした音楽の多様性をもって、それまで娯楽として位置づけられていたミュージカルとは違う、物語と音楽が文字通り融合した全く新しい演劇の形態としてまとめあげ、芸術性の確立と舞台表現の可能性を示した。 本稿は、作者であるオスカー・ハマースタインII世 (脚本・作詞) とジェローム・カーン (作曲) それぞれがこの作品において成し遂げた芸術的手法と、 この作品がミュージカル史において果たした役割を通して、その革新性を考察するものである。
著者
竹内 誠
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.18, pp.83-106, 2010-11

ソルフェージュとハーモニーの能力は、音楽を専門とするには不可欠であり、音楽大学の専門科目では根幹となる授業である。従って、ソルフェージュ教育とハーモニー教育の現状と問題点は、音楽大学の現状と問題点をそのまま映し出している。今回の研究ノートは、芸術情報研究第16号に鳴海史生教授が書かれた、"「固定ド・移動ド」をめぐって"への私の回答であり、現在すすめている新規ハーモニーテキスト内容の一部である。また、工学系大学の音楽への取り組みを紹介して、音楽大学の現在置かれている社会的立場を考察する。
著者
華山 宣胤 定平 誠
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.13, pp.17-26, 2008-03

インターネットの高速化とコンピュータの処理能力の向上に伴い、ウェブサイトの動画コンテンツ配信のあり方が注目されている。Webラーニングにおいても、Webとインターネットをプラットホームとする動画コンテンツの有効活用を試行している。しかし、動画配信を中心とするカルチャー教育のWebラーニングについて調査すると、講座には興味を示す人が多いにもかかわらず、実際に利用している受講者は極めて少ないのが現状である。それは、制作者側が単に講座の種類と数を増やすことに腐心し、講座の有効なプロモーション活動を怠っているためである。そこで、本研究では、カルチャー教育を動画配信している「ネット塾」の各種の講座についてのイメージ調査を行い、そのデータ分析から、動画配信講座の有効なプロモーション方法を考究する。今回の研究は、この研究調査の予備調査の結果を中心に報告する。
著者
河野 元昭
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.12, pp.9-21, 2007-11

日本文人画誕生の秘密を解くためには、岡倉天心が『東洋の理想--特に日本美術について--』において指摘したような日本文化の本質的な性格を知らなければならない。その表層だけを眺めてはならない。これは日本文化について考察する際、つねに忘れてはならないことだが、日本文人画の場合には、とくに心に留めておく必要がある。それは中国絵画との関係がきわめて密接だからである。その基本的様式が中国絵画によって規定されているからである。そして日本文人画家の中国憧憬が誰よりも強かったからである。本論は『芥子園画伝』など中国画譜の学習と、荻生徂徠が重視した唐話学を改めて取り上げることによって、日本文人画誕生における中国憧憬の重要性を指摘したものである。
著者
石橋 透
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-21, 2014-03-31

プロオーディオの世界で使用されているワイヤレスマイクの歴史は50年以上にも前にさかのぼる。 今やワイヤレスマイクなくして映画作品、 テレビ番組制作はできないと言っても過言ではない。 また、 ライブ・コンサートをはじめとする各種イベント、 選挙の街頭演説、カラオケ、 教育機関の授業と枚挙にいとまないほどに、 ワイヤレスマイクは我々日常生活に深く入り込んでいる。 また、 携帯電話などの電波需要の増加に対応するため、 2011年6月1日の電波法改正で、 A型ワイヤレスマイクで使用していた周波数帯域が携帯電話専用となった。 そして、 2019年4月1日以降は、 全てのA型ワイヤレスマイクが一切使用できなくなる。 これに伴い、 全国の放送局はじめ劇場・ホール等で使用されている約27,000本(2014年2月推定)にも上るワイヤレスマイクは全てこれに則した製品への更新が発生する。 本学、 情報表現学科においても、 「映像ドラマ演習」 はじめ、 様々な演習系授業で、 映像実践においてのワイヤレスマイクの使用は避けられない。 しかし、 使用する場所によって電波がデッドポイント入り受信感度が極端に落ち、 音声がミュートすることがある。 この問題の解消を含め、 筆者の実践を踏まえ、 考察する。
著者
鳴海 史生
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-36, 2007-11-30

本論は、モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》の通奏低音チェンバロにもっとも適した調律法を探る試みである。モーツァルトの鍵盤楽曲全般がそうであるように、《フィガロ》の通奏低音チェンバロにもまた、平均律はふさわしくない。なぜなら、モーツァルトが作曲の際に使用する調と転調の可能性をみずから制限し、それとの引き換えに鍵盤楽器の美しい響きを求めていたことは明らかだからである。したがって、われわれは歴史的な不等分律のなかから、このオペラのレチタティーヴォ伴奏に最適な調律法を探り出さなくてはならない。しかし、ラモー、ヴェルクマイスターIII、ヤングII、ヴァロッティといった、よく知られる歴史的調律法を採用することには、いくつかの難点がある。鳴り響きの美しさや演奏効果、および演奏上のさまざまな条件を勘案すると、ピタゴラス・コンマをF-C-G-D-A-E-B-F♯の7つの5度に割り振る「1/7調律法」が、《フィガロ》にもっとも適した方法として推奨できる。
著者
小池 保
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-26, 2010-03

マスメディアの経営が、極めて苦しい。不況による打撃だけではない。「マス」広告によるコミュニケーションが、以前のようには効かなくなったことが大きい。論考ではまず、その背景となっている、意識と行動を激変させた「賢い生活者」のあり方に注目し、「クチコミ」というコミュニケーションが表舞台に登場してくる必然性について論じる。続いて、新たな状況に適合すべく、広告ビジネスの先端的クリエイターたちが始めた「コミュニケーション・デザイン」という最新の取り組みが、どんな有効性を持つか検証する。賢い生活者との、最高レベルのコミュニケーションを実現するために、例えば全国の郵便局までをも「メディア」に変えてしまうなど、自由かつキメ細やかにデザインされたコミュニケーションの創出が、どのような新たな時代を拓いてゆくのかについて展望する。
著者
定平 誠 斎藤 忍 松浦 克樹
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-16, 2012-03

埼玉県には他県に引けを取らない魅力あるコンテンツ(歴史遺産、文化、工芸、自然など)が数多く点在する。しかし、これらのコンテンツの魅力を十分に情報発信しきれていないため、埼玉県の全国的な認知度は低いという現状がある。そこで、本研究は埼玉県の魅力あるコンテンツの認知度を高めるべく、コンテンツの演出効果の向上をめざした新たなネットワーク連動型のプラットフォームとなるウェブサイトを構築する。このサイト上で紹介されるコンテンツ情報はYouTubeを始め、Twitter、Facebook、Google+などのソーシャルメディアとの連携を図り、バズマーケッティングへと発展させる。そして、これらの結果を踏まえ、埼玉県のコンテンツの発信能力をいかに強化していけるか、埼玉県のブランド創出につなげていけるか、また、地域能力の向上に貢献することができるかについて考究する。