- 著者
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飛田 良文
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.48-68, 2008-01-01
明治初年の英語教育は、大学南校と慶応義塾から始まった。そのとき使用された英文典のテキストが、クワッケンボスとピネヲの二つの英文典であった。教育課程には外国人教師が正しい発音で教授した正則と、日本人教師が発音におかまいなく翻訳を目的とした変則とがあった。正しい発音を示し、その訳語を普及するために、大学南校と慶応義塾とは、テキストの翻刻とその翻訳書「英文典直訳」を公刊した。そこには言語構造が異なるため、英文に則した逐語訳には、新訳語、新しい訳し分けが必要となった。その中には定着したもの、消滅したものがある。消滅したものの一つが六時制の訳し分けであるが、これこそが欧文直訳体の文末表現の特徴であることを提示した。