- 著者
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小山 充道
- 出版者
- 日本特殊教育学会
- 雑誌
- 特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.3, pp.34-43, 1984-12-30
重度失語症と情動障害を伴う後天性脳障害児1症例(初診時13歳5ヵ月、女子)をとりあげ、言語訓練過程のみならず、患児の情動反応についても検討した。その結果、次のような知見を得た。(1)言語機能の改善には、情動安定が計られることが重要であり、失語症が重度であればあるほど、言語訓練そのものよりも、心理療法的接近が必要となってくると考えられた。(2)病理的人格反応図式(小山:1982)に従えば、患児の情動は当初通過症状群の範畴にあり、言語訓練を通して治療者との関係が深まるにつれて、再適応症状群へと移行していったと考えられた。(3)情動安定を計るために、次のような心理療法的接近が考えられた。家族(特に母親)にも、リハビリテーションチームの一員としての自覚をもたせ、共に言語訓練に参加させた。患児の悲痛な訴えを無条件に聞き入れる一方、患児は思春期前期にあることを考慮して、可能な限り一人前の人格者として接するように努めた。言語訓練は患児の精神生活にリズムを与え、患児にとって、単なる言語機能の改善以上の意味をもっているように思えた。