著者
高木 庸平
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C1422, 2008

【目的】<BR>社会の急速な高齢化に伴い大腿骨近位部骨折の発生件数は年間10万人を超えると推測される。急増する大腿骨近位部骨折の患者様に対し、急性期治療から在宅支援に至るまでの包括的かつ効率的なアプローチ行うことは、重要な課題の一つである。そこで今回、当院が運用する大腿骨近位部骨折の連携パスを紹介すると共に、約10ヵ月間の臨床実績をもとに、後方支援施設における役割と課題を報告する。<BR>【方法】<BR>2006年3月急性期K病院より連携パスの運用についての提示を受け、双方の運営会議を経て、2006年12月より連携パスの運用を開始した。その後、急性期K病院、大腿骨頚部骨折術後(3週目以降)の患者様を受け入れている。また、連携パス評価には双方の意見を組み込み、人工骨頭・骨接合術・DSSの3パターン、A3判の紙によるスタッフ用と症例・家族用の連携パスの2つに分けて統一・運用し、連携パス導入前後の経過を調査した。<BR>【結果】<BR>症例数:18例(内約、男性:6 女性:12)、平均年齢:82.6歳(61~94歳)、術式:骨接合術=10例、人工骨頭=6例、DSS=2例、転帰:自宅退院8例、リハ中止3例、施設転院4例、平均在院日数:導入後91.1日(17~123日)、導入前129日<BR>在宅復帰率:導入後47%、導入前26%、Brathel Index推移:(入院時)45.6点、(入院中)63.2点、(退院時)69.4点<BR>【考察】<BR>今回、連携パスを通じて平均在院日数、在宅復帰率、Barthel Index推移における臨床実績の改善を認めた。このことから、導入前後の経過を比較してみると、当院は後方支援施設として、訪問リハビリテーション、介護老人保健施設、デイサービスセンター、短期集中型通所リハビリテーション等の多くの関連施設を併設し、回復期~在宅復帰までの重要な役割を担っている。そこで、連携パスを導入したことに伴い、これまで以上に他職種との情報交換が密接に行え、フォローアップの体制が充実したことが伺えた。よって、情報の共有化が円滑に行え、症例・家族へのインフォームドコンセントを通じて、退院への心理的不安を可能な限り解消でき、結果として導入前に比べ導入後は、医療保険~介護保険への受け渡しが十分に行えていたことが考えられる。<BR>【まとめ】<BR>当院で使用している大腿骨近位部骨折の連携パスについて紹介した。連携パスを開始して約10ヵ月が経過し、大きなトラブルもなく運用されている。現在のところ、パス導入に伴い『地域連携体制の強化』が進行してきており、その経過について検証していくことで、より良いものへと改訂していくべきではないかと考える。最後に、当院では退院者に対して連携パスに対する満足度調査を実施している。現在、情報収集中であるが、今後フィードバックされた情報を集積・分析し、在宅ケアを含めたパスの延長、内容の更なる検証に繋げていきたい。

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