- 著者
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北村 匡大
片岡 浩海
- 出版者
- 公益社団法人日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
- 巻号頁・発行日
- vol.2007, pp.D1703, 2008
【はじめに】大動脈瘤破裂に対しては、通常手術を施行し、施行しない場合は生存率が低いことが知られている。今回、胸部大動脈瘤(以下TAA)破裂後、保存的加療を行った症例に対しての理学療法を経験し、ADL向上を認めたので、ここに報告する。<BR>【症例紹介】87歳女性、病前ADL自立、NYHAI度。TAAにて近医に通院中であった。2007年8月9日夜、突然の胸痛後ショック状態となり、近医に救急搬送となり、CTにてTAA(遠位弓部)破裂および左血胸と診断。当院へ搬送入院、ICU管理となる。治療は家族の希望もあり、手術はしない方針で安静、鎮痛・鎮静などによる対症療法にて保存的に様子をみた。入院時JCSクリア、収縮期血圧120mmhg(ニカルピン静注10ml/hr)、HR60台、SpO2 94~97%(02 10L/min)、体動にて喘鳴著明。貧血を認めたため、赤血球濃厚液4単位輸血後バイタルサイン安定。入院5日目左血胸に対し胸腔ドレナージ間歇的に施行。入院6日目に一般病棟へ転棟。入院44日目Dr指示よりADL向上目的、安静度ギャッジアップ60°まで、収縮期血圧100~130mmHg範囲内、SpO2 95%以上にてベッドサイドより理学療法開始となる。<BR>【理学療法開始時所見】JCSクリア、認知症 軽度、Demand 家に帰りたい、GMT 上肢3 体幹2 下肢2、疼痛 腰部周囲筋群・両下肢筋群に伸張痛、ROM 股・膝関節に屈曲制限、足関節に背屈制限、基本動作・ADL動作 全介助FIMは48点であった。臨床所見として、表情良好、O2 2L/min、痰はほぼなし、左呼吸音減弱、食事は経口摂取と高カロリー輸液の併用、末梢冷感有、足背動脈触知可。X線で左肺血胸認め、NYHA IV度であった。<BR>【経過】理学療法開始1日目(入院44日目)ギャッジアップ30°、軽度の筋トレ、ストレッチ施行。翌日O2 off。9日目 ギャッジアップ90°、その後深部静脈血栓症認め立位は保留。22日目 下大静脈フィルター留置後、翌日より座位、車椅子、P-トイレ、機械浴開始。27日目 歩行器歩行開始(10m程度息切れ有)、39日目 本人・家族の希望もあり近院に転院となる。歩行器歩行(100m息切れ無)。ADL動作はFIM 72点であった。<BR>【まとめ】TAA破裂後の予後は厳しい報告が多い中、保存的加療行った症例の理学療法を経験した。病態が十分に安定しているとはいえない中、運動療法施行では、低負荷・頻回のメニュー、運動中の息こらえ、息切れ、旧Borgスケールで11~13程度以下の疲労感に注意しながら行った。結果、理学療法開始39日間にてADLの向上を認めた。この背景としては、再破裂を起こさなかったこと、病前ADLが高かったこと、本人の在宅復帰への要望が強かったことが考えられた。