著者
ジョンソン チャールズ スイッチャー ケイ
出版者
日本ニュージーランド学会
雑誌
日本ニュージーランド学会誌
巻号頁・発行日
vol.13, pp.56-74, 2006-06-17

本稿では、大規模なイヴェントを開催することが、開催地の経済、特に観光業界とレジャー産業に勝者と敗者を生み出すことを検証する。この「ミクロ的」な現象は、地域全体を取り扱う「マクロ的」結果を検討する経済効果研究では明らかにされない。本稿では、 1999年から2000年にかけて、ニュージーランドのオークランド市で開催されたアメリカス・カップのヨットレースを事例として取り上げて、この分析を試みる。まず初めに、勝者と敗者という視点から文献研究を行う。その際に、ほとんどの過去の開催都市はヨットレースの開催で利益を得ているが、しかしこの利益の規模を測定する方式では、現地の経済的実情を計れないということに注目する。次に、オークランド市でのヨットレースの開催以前・開催中・開催以後といったように時系列でイヴェント内容を提示し、オークランド市全体としては、利益があったことを示す。第3章では、勝者と敗者という視点から、『公式的』な事後的な経済的アセスメントの調査結果を解釈する。ここでは、まず第1に、観光業それ自身が、ヨットレースの金銭的成功に対する通常の原因であること、第2に、オークランド市民の行動の変化という視点から見ると、規模が大きいにもかかわらず分析がなされていないことを明らかにする。次に、オークランド市の中心街に位置する観光業とレジャー産業や、「中心地の近郊のカフェー」に関する実地調査の結果を提示する。その分析結果として明らかとなったのは、中心街の企業は、小規模のたなぼた的利益を得るが、郊外の企業は、常連客が来なくなるという移転効果を経験したことがある。結論としては、大規模なイヴェントの効果分析は、このイヴェントによって影響を受ける全ての企業の実態に基づくべきことである。全体的な結論として、「ミクロ」と「マクロ」の両方の分析が、イヴェントの企画者にとって、開催地の企業の損失をより的確に予測し、回避するのに必要であることを強調している。

言及状況

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こんな論文どうですか? オークランド開催アメリカス・カップ1999-2000 : 地域経済における勝者と敗者,2006 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006825113 本稿では、大規模なイヴェントを開催することが、開催地の経済、特に観光業界とレジャー産

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