著者
矢野 栄二 西川 翔子 山根 雅史
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-10, 2008

現在、世界各国で施設栽培の野菜・花きの害虫防除に多くの天敵昆虫類が利用されている。ショクガタマバエAphidoletes aphidimyza(Rondani)も、施設栽培のアブラムシ類に対する有望な生物的防除資材として世界各地で利用されており、その効果が認められている。わが国においても1995年以降、外来系統のショクガタマバエを含む16種の天敵昆虫が農薬登録され、害虫防除資材として実用化している。アブラムシ類の防除資材としてはコレマンアブラバチAphidius colemani Viereckなど外来天敵昆虫の利用が先行していたが、近年、わが国においても国内系統のショクガタマバエを利用したアブラムシ類防除の機運が高まっている。国内系統は外来系統に比べ、より環境リスクが少なくわが国の気候に適応していると考えられる。ヨーロッパ系統のショクガタマバエの生態特性については、発育、増殖能力、捕食能力、休眠、餌探索行動、配偶行動など多岐にわたる研究が行われている。また大量増殖方法、貯蔵法、温室内の放飼による効果判定試験など害虫防除への利用についても多くの報告がある。わが国の系統について、まだほとんど生態的特性は解明されていないが、本種が北半球に広く分布する種である事を考慮すれば、ヨーロッパの系統とは同種ではあるがかなり異なる特性を保持していると予想される。それにともない利用技術も異なるものになる可能性がある。そこで本種国内系統の実用化に向けて、その基礎となる知見として、ヨーロッパ系統に関する生態特性と利用技術に関する研究成果を中心に、これまでの知見をとりまとめて総説として報告したい。

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