著者
粟野 由美
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.42-45, 2007-03-01

本稿では芸術系大学でデザインを学ぶ学生を対象に開講している「デジタルカラー演習」という授業を題材に、色彩学、造形心理学、デザイン実習とコンピュータ演習を重層化したデジタル色彩学のカリキュラムの開発に取り組んできた過程を整理することで、「Computer Aided Design」時代の色彩教育のありかたを検討する。演習型授業の基本技術として「与える」「引き出す」「整える」のバランスおよびタイミングは重要である。「デジタルカラー演習」は、デジタルとカラーというキーワードを併置してコンピュータと色彩におけるフィジカル面とメンタル面のリテラシーを双補完的に向上するよう設計している。コンピュータ・リテラシーが今日のデザイナーの基本技術となったのはコマンドのGUI化に負うところが大きい。一方で、色彩学習の基礎が自然の色彩体験の再現すなわち絵の具による色の発現に立ち会うところから始まるのだとすれば、アルゴリズムから色・形・動きとして視覚化されるプロセスに立ち会うことがこれに相当すると考えられる。"デジタル/カラー"から"デジタル・カラ-"へ、この概念を具体化することが今後の課題である。

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