著者
宮本 城
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1054-1057, 2008-03-25

南インドのタミル文学の起源は,紀元前に遡り,古来から,北インドのサンスクリット文学とは異なる独自の伝統を保持してきた.しかし,中世以降,タミル社会のヒンドゥー化が進むにつれて,文学の分野でも,サンスクリット文学の影響を大きく受けるようになり,『ラーマーヤナ』,『マハーバーラタ』,プラーナ文献などのサンスクリット作品が,タミル語で翻案されるようになった.そのような潮流の中,『ナラ王物語』に対しても,タミル語版Nalavenpa(『ナラ・ヴェンバー』)という作品が,13世紀頃(?)に,Pukalentiによって作られた.このNalavenpaによって,Pukalentiは,当時,大きな名声を得たといわれている.しかし,近現代のタミル文学研究では,Nalavenpaは,『ナラ王物語』の単なる翻案に過ぎないとみなされ,これまで重要視されることはなかった.ところが,実際に同作品を読んでみると,話の筋そのものは,サンスクリット文学の『ナラ王物語』に従いつつも,サンスクリット文学特有の長大な装飾表現を用いず,タミル文学の伝統に従って著されたものであることが見てとれる.本論文では,まず,『ナラ王物語』とNalavenpaの類似点,相違点を示すとともに,Nalavenpaの中で,タミル文学の伝統表現がどのように用いられているかを例示した.そして,Nalavenpaは,『ナラ王物語』をただタミル語に翻訳したものではなく,『ナラ王物語』をタミル文学の伝統に基づいて改変したものだからこそ,タミル地方で大きな名声を博したのではないか,ということについて考察した.

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こんな論文どうですか? タミル化された『ナラ王物語』 : Nalavenpaをめぐって(宮本城),2008 http://id.CiNii.jp/diPJL

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