- 著者
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熊田 一雄
- 出版者
- 愛知学院大学
- 雑誌
- 愛知学院大学文学部紀要 (ISSN:02858940)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, pp.83-93, 2007
この論文の目的は,日本の初期新宗教である天理教の女性教祖である中山みき(1798-1887年)の男性信者に対する信仰指導を再検討することにある。老境に達した中山みきは,自分のもとを訪れる男性たちに対して,しばしば「力比べ」をもちかけて,簡単に負かしては「神の方には倍の力」と説いて聴かせていた。中山みきは,「世直し」という当時の時代風潮の中で,国家に対する対抗暴力(「謀反」)や妻に対するドメスティック・バイオレンスのような男性信者による暴力を制御する(「手綱をさばく」)可能性を,親神に対する信仰に基づいて高めようとした実践した無抵抗・不服従の宗教家であった。