著者
臼井 直人
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.277-303, 2000-03

本論は一部の英語教育研究者およびコミュニケーション学者が議論している「英語帝国主義への反論」に見られるイデオロギーを批判的に分析することを目的とする。これら研究者達は日本人の英会話に対する熱のいれ方、日本人の欧米文化の取り入れ方、学校英語教育の方向性などを一種の「英語帝国主義のイデオロギー」に毒された病理であると見なし、英語帝国主義を批判している。しかしその一方でこの帝国主義に対抗する手段として「コミュニケーションの平等」の名の下に日本国内における英語の使用の否定、「美しい日本語」の保持、日本人としてのアイデンティティの確立などを提案する向きがある。本論はこのような19世紀的国家イデオロギーにも似た思想が、果たして真のコミュニケーションの平等、国際人の養成に健全な形でつながるのか、多言語主義・多文化主義の立場から理論的考察を試みるものである。

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