著者
乾 彰夫
出版者
首都大学東京
雑誌
教育科学研究 (ISSN:02897121)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.31-41, 2008-03
被引用文献数
1

学校から仕事への移行過程が変容するにしたがって、不安定で流動的な状態にある若者たちが急速に増加している。こうした状況は、過去20年あまりの間に、日本のみならず先進諸国に共通の現象として発生している。若者たちをめぐる状況は、近代化・産業化の過程を通して、一旦は学校から安定した仕事へのスムーズな移行を標準化させてきた先進諸国にとって、新たな問題認識と対応を求める課題を突きつけてきた。流動化する若者たちの状況の性格や原因をどう見るか、社会的な支援は必要なのか、また必要だとすれば誰に対して、何に対して。こうした議論は、日本の「フリーター」「ニート」問題に限らず、多くの国々で繰り広げられてきた。「フリーター」「ニート」論議の初期のように、その原因を若者たちの「意欲」に求める議論はこうした状況を経験している国々では少なくない。そうしたなかで、こうした若者たちの置かれている状況を量的にも正確に把握しようとする試みと、そのための様ざまな新たな統計的カテゴリーが登場した。イギリスのNEET概念や、厚労省・内閣府等による「フリーター」「ニート(若年無業者)」集計などがそうである。だがこうした様ざまな試みにも拘わらず、依然として、こうした状態にある若者たちへの多義的な理解、あるいは認識の食い違いは解消されていない。だが、こうした多義性は、集計上のカテゴリーの不十分さ・未熟さ以上に、今日の若者たちのおかれた状態の本質的な性格にある。ここでは、先進諸国のこうした若者層の流動性の今日的な性格から問題をとらえ直すとともに、若年労働市場規制のあり方と関係させつつ日本の若者のおかれている特徴を明らかにしたい。

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