著者
渡邊 寳陽
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1285-1292, 2009

日蓮は,一二六〇年に『立正安国論』を鎌倉幕府の前執権,最明寺入道時頼に奏進した.打ち続く天災地変は,正しい精神によって国が治められていないためであるという,鎌倉幕府の宗教的良心と目される枢要な人物への諫言である.日蓮の諫言はあくまで仏典に尋ねた結論に従った宗教的行為として終始した.その後,日蓮は法難を受け,『立正安国論』は予言の書としての意義を重くしていく.法華経の行者として,四大法難を体験した日蓮は,末法に展開すべき法華仏教の内観の世界を『如来滅後五五百歳始観心本尊抄』として著す.一見,対比的に見られる両書だが,宗教的救済の現実化の側面と,仏法の内面化の側面とを,それぞれの論述のうちに共有していることに注意を要することを指摘する.

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