著者
黒石 憲洋 佐野 予理子
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.67-78, 2007-03

日本人における「ふつう」概念の重要性について再検討するため,場面想定法を用いた実験的質問紙調査をおこなった.仮想場面として,他者との違いが量的に示される場面と質的に示される場面において,それぞれに拘束力の高い状況と低い状況を設定した.各場面において,周囲と同じ行動をとる他者あるいは周囲と異なる行動をとる他者を提示し,その他者に対する対人認知を測定した.結果として,いずれの場面においても,「ふつう」認知は周囲と同じ行動をとるかどうかにより影響を受けていた.また,他者との違いが量的に示される場面においては,遂行の高低に応じて対人認知が変化したが,それらの効果に「ふつう」認知による媒介はみられなかった.日本人における「ふつう」概念は,他者存在に向けられたものではなく,自己の状態として認知される場合にのみ,重要となる可能性が示唆された.

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