著者
山本 幸正 Yukimasa Yamamoto 湘北短期大学 Shohoku College
出版者
湘北短期大学・紀要委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.29, pp.109-120, 2008

敗戦後に公布された法律、たとえば姦通罪を廃止した改正刑法、あるいは優生保護法などが文学に与えた影響は決して小さなものではなかった。しかし1958 年から完全に施行された売春防止法が文学に与えた影響については、これまでさほど論じられて来なかった。本稿では、敗戦後に小田原にあった抹香町という「淫売窟」を舞台に数々の作品を発表し、ブームにまでなった川崎長太郎の諸作品を読むことを通して、売春防止法と文学の関わりの一側面について考察することを試みた。「娼婦」一般ではなく、ひとりの女の肉体を通して売春防止法と対峙した私小説家の姿は、売春防止法以後の買売春と文学の関わりを考える上でも、看過することのできないものである。

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