著者
馬場 二夫 森田 茂 杉田 たき子 石綿 肇
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-53, 1995-10-01

陶磁器製の食器からの鉛とカドミウムの溶出濃度の調査と,アメリカ食品医薬局(FDA)により提案された鉛の規制値案への適合率を調べる目的で,以下の実験を行った.溶出条件は,わが国の現行試験法(国際標準化機構,ISO,でもほぼ同一条件)である4%酢酸を用いて25℃で24時間の条件で実験をおこなった.鉛およびカドミウムの測定はICPによった.実験に用いた83種の市販試料のうち,鉛の溶出は44試料で,また,カドミウムの溶出は26試料で認められた.試料内側(食品と接触する面)から溶出した鉛の平均値±S.D.,最高値,最低値はそれぞれ0.48±1.32, 8.78, 0.00 μg/cm^2であった.カドミウムでは,それぞれ0.01±0.03, 0.25, 0.00 μg/cm^2であった.鉛の溶出は,ゆう薬のある54試料中16試料で,また,ゆう薬の無い29試料全てで認められた.平均値は,前者で0.04±0.18 μg/cm^2,後者では1.28±2.00 μg/cm^2であった.カドミウムの溶出は,ゆう薬のある54試料中9試料で,また,ゆう薬の無い29試料中17試料で認められた.平均値は,前者で0.00±0.01 μg/cm^2,後者では0.03±0.05 μg/cm^2であった.本実験に用いた83試料中1試料で規格値(抽出液中5 ppm)を超える7.37 ppmの鉛が溶出した.これらの結果は,約20年前に同一溶出条件の下で行われた調査結果と比べ,1/10またはそれ以下であった.以上の結果を,わが国の現行規格(ISOの規格案も同じ)に従って分類してTable 3に示した.違反事例の1試料を除き,最高値でも規格値よりかなり低濃度であった.また,深さが2.5cmを超える73試料のうち57試料(78%)では鉛の溶出がFDAの規格案である0.1 ppm以下であった。

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