著者
石綿 肇 杉田 たき子 武田 明治
出版者
Japanese Society of Food Chemistry
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.145-150, 1997-02-24 (Released:2017-12-01)
参考文献数
15

プラスチック製品は、生態系において分解しにくいことから環境問題として大きく取り上げられている。生分解プラスチックの開発、製品化も図られているが、現在、市販されている製品は大部分が既存プラスチックである。分解促進のために、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチックへのデンプンの添加なども試みられている。メラミン樹脂をはじめとする熱硬化性プラスチックは、物理的強度を保つために、通常、製造原料として17%から50%のセルロースが加えられている。そこで、環境保全の観点から、メラミン食器の酵素的及び非酵素的分解について検討を試みた。食器用の未硬化メラミン樹脂コンパウンド及び2種類のメラミン樹脂製コップを粉砕したものを試料として用いた。コンパウンド及びコップ粉末に0.1Mリン酸緩衝液(pH4.5)中40℃でセルラーゼを48時間作用させたところ、コンパウンドではグルコースとして603ppm、コップ粉末では88ppmの糖が遊離した。セルラーゼ無添加では遊離糖は検出されなかった(Fig. 1及び2)。遊離糖のHPLC分析を行ったところ、主成分はグルコースで、セロビオースは見られなかった(Fig. 3)。この時、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加がみられたが、セルラーゼの添加による促進は認められなかった。従って、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加は、樹脂の非酵素的分解によるものである。コップ粉末での48時間後におけるこれら3種類のモノマーの合計は、原料の約3%であった。メラミン樹脂の非酵素的分解は、温度が高いほど促進され、また、酸性あるいはアルカリ性で促進された(Fig. 5)。これらの結果は、メラミン樹脂は自然環境下で酵素的、非酵素的に徐々に分解されることを示している。遊離したメラミンモノマーはある種の微生物により資化されることが知られており、モノマーによる二次汚染の可能性は低いと考えられる。
著者
伊藤 澄夫 武田 寿 小林 昭彦 桜井 裕之 多田 善彦 青木 岳 細貝 猛 山中 崇彰 石綿 肇
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.254-256_1, 1993

輸入ウオッカ中のフタル酸ジブチル (DBP) の簡易で迅速な分析法を開発し, 応用を試みた. DBPは試料から<i>n</i>-ヘキサンで抽出, 直接FID付キャピラリーカラムガスクロマトグラフで定量した. 0.5~5.0ppmのDBPを試料に添加したときの回収率は92.7~98.5%であった. 検出限界は0.1ppm, 所要時間は約30分であった. ロシア産ウオッカ15試料について定量を行ったところ, 2試料から0.1及び0.2ppmのDBPが検出された. これらに付いてはGC/MSで確認を行った.
著者
馬場 二夫 森田 茂 杉田 たき子 石綿 肇
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-53, 1995-10-01

陶磁器製の食器からの鉛とカドミウムの溶出濃度の調査と,アメリカ食品医薬局(FDA)により提案された鉛の規制値案への適合率を調べる目的で,以下の実験を行った.溶出条件は,わが国の現行試験法(国際標準化機構,ISO,でもほぼ同一条件)である4%酢酸を用いて25℃で24時間の条件で実験をおこなった.鉛およびカドミウムの測定はICPによった.実験に用いた83種の市販試料のうち,鉛の溶出は44試料で,また,カドミウムの溶出は26試料で認められた.試料内側(食品と接触する面)から溶出した鉛の平均値±S.D.,最高値,最低値はそれぞれ0.48±1.32, 8.78, 0.00 μg/cm^2であった.カドミウムでは,それぞれ0.01±0.03, 0.25, 0.00 μg/cm^2であった.鉛の溶出は,ゆう薬のある54試料中16試料で,また,ゆう薬の無い29試料全てで認められた.平均値は,前者で0.04±0.18 μg/cm^2,後者では1.28±2.00 μg/cm^2であった.カドミウムの溶出は,ゆう薬のある54試料中9試料で,また,ゆう薬の無い29試料中17試料で認められた.平均値は,前者で0.00±0.01 μg/cm^2,後者では0.03±0.05 μg/cm^2であった.本実験に用いた83試料中1試料で規格値(抽出液中5 ppm)を超える7.37 ppmの鉛が溶出した.これらの結果は,約20年前に同一溶出条件の下で行われた調査結果と比べ,1/10またはそれ以下であった.以上の結果を,わが国の現行規格(ISOの規格案も同じ)に従って分類してTable 3に示した.違反事例の1試料を除き,最高値でも規格値よりかなり低濃度であった.また,深さが2.5cmを超える73試料のうち57試料(78%)では鉛の溶出がFDAの規格案である0.1 ppm以下であった。
著者
石綿 肇 谷村 顕雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.171-183, 1982-08-31 (Released:2008-05-30)
参考文献数
125
被引用文献数
6 5

Ingestion, absorption, metabolism and excretion of nitrate and nitrite in humans and experimental animals are described on the viewpoint that carcinogenic N-nitroso compounds are formed by the reaction of nitrite with amines or ureides. Although nitrate is an inactive substance on animals and most of that administered is excreted in the urine, nitrite which is derived from nitrate in vivo by microorganisms in the digestive tracts has highly pharmacological and biochemical activities. The latest problems on the possibility of the nitrification in the body and the nitrate balance are also reviewed. It seems that nitrate highly affects the human health because the substance is easily reduced to nitrite in the body.
著者
石綿 肇 杉田 たき子 武田 明治
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.145-150, 1997-02-24

プラスチック製品は、生態系において分解しにくいことから環境問題として大きく取り上げられている。生分解プラスチックの開発、製品化も図られているが、現在、市販されている製品は大部分が既存プラスチックである。分解促進のために、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチックへのデンプンの添加なども試みられている。メラミン樹脂をはじめとする熱硬化性プラスチックは、物理的強度を保つために、通常、製造原料として17%から50%のセルロースが加えられている。そこで、環境保全の観点から、メラミン食器の酵素的及び非酵素的分解について検討を試みた。食器用の未硬化メラミン樹脂コンパウンド及び2種類のメラミン樹脂製コップを粉砕したものを試料として用いた。コンパウンド及びコップ粉末に0.1Mリン酸緩衝液(pH4.5)中40℃でセルラーゼを48時間作用させたところ、コンパウンドではグルコースとして603ppm、コップ粉末では88ppmの糖が遊離した。セルラーゼ無添加では遊離糖は検出されなかった(Fig. 1及び2)。遊離糖のHPLC分析を行ったところ、主成分はグルコースで、セロビオースは見られなかった(Fig. 3)。この時、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加がみられたが、セルラーゼの添加による促進は認められなかった。従って、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加は、樹脂の非酵素的分解によるものである。コップ粉末での48時間後におけるこれら3種類のモノマーの合計は、原料の約3%であった。メラミン樹脂の非酵素的分解は、温度が高いほど促進され、また、酸性あるいはアルカリ性で促進された(Fig. 5)。これらの結果は、メラミン樹脂は自然環境下で酵素的、非酵素的に徐々に分解されることを示している。遊離したメラミンモノマーはある種の微生物により資化されることが知られており、モノマーによる二次汚染の可能性は低いと考えられる。