- 著者
-
工藤 剛治
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.3, pp.13-33, 2009-12-10
日本は第2次大戦に敗北し,占領軍によって社会経済上の大きな変革を迫られた。この「GHQ革命」は農地解放や財閥解体を断行し,労働組合の合法化を実現したが,そのことによって,戦後日本の階級構造は戦前日本,戦時期日本あるいはGHQが想定したアメリカ型の階級構造とは著しく異なるものになっていった。大企業の場合,経済パージによって中堅・若手の経営幹部が経営トップの位置につき,また株式の相互持合なども活用しつつ,資本と経営の分離を加速していった。その結果,他国に例を見ないほど,資本所有者からの経営者の自立が促された。これら新経営者にとって長年勤めてきた企業こそ,その権力母胎であったから,彼らは企業を共同体とみなすイデオロギーを発達させた。その結果,対労働の関係では,彼らは階級的労働組合を嫌い,企業内労働組合=第 2組合を育成する政策を採用した。こうして戦後日本の大企業経営者は,資本と労働をともにコントロールする「経営者革命」の達成に成功した。このユニークな階級構造を反映した経営スタイルこそ「日本的経営」と呼ばれるものであった。