著者
佐々木 章晴
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.251-261, 2009-10-15

北海道東部に位置する根釧地方は、おおよそ北緯43°から44°の間に位置し、北が知床火山列に、東が根室海峡に、南が太平洋に、西が白糠丘陵に囲まれている広大な丘陵地帯である。根釧地方南の太平洋は、日本海流と千島海流がぶつかる海域であり、夏季は海霧の発生が多い。さらに、根釧地方は北から西にかけて山地に囲まれており、発生した海霧が南よりの風に乗って流入すると、滞留しやすい。そのため、年間海霧日数108日であり、6月から8月の1/2-2/3は霧日となり、日照時間の少ない冷涼な気候となっている。地質としては第四紀層である阿寒・屈斜路カルデラ由来の火砕流堆積物と火山灰に広く覆われており、河川周辺や沿岸低地には湿原が発達している。地形は一般に平坦または段丘状、波状であり、沿岸部には内湾や海跡湖が見られる。冷涼な気候であることから、日本でも貴重な北方圏の自然と野生生物が残存している土地である。現在、根釧原野には、340種以上の鳥類が確認され、400種以上の草花が確認されている。これらの野生生物は、根釧原野独特の景観を創り出す担い手となっている。一方、根釧地方は明治以来、開拓の歴史を持ち、現在では日本有数の草地酪農地帯となっている。この報告では、特に戦後の酪農開発が根釧地方の植生、河川、水産業、野生生物(鳥類)にどのような影響を与えているか実態を把握する。その実態を踏まえ、問題点を整理し、酪農と自然環境・水産業との共存の道筋を明らかにする。

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