著者
中川 仁
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.274-283, 2009
参考文献数
36

植物は光合成によって太陽エネルギーを最も効率よく利用している生物である。すなわち、大気中の二酸化炭素(CO2)と大地の水(H2O)を原料にし、太陽エネルギーによって炭水化物(CH2O)と酸素(O2)を作り出すことができる。ここで生産された炭水化物を燃料として燃焼しても、原料として用いたCO2が大気中に放出されるため、基本的に大気中のCO2量は増加しない計算になり、これをカーボンニュートラルと呼ぶ。これが、化石燃料をバイオマス燃料で代替することによる大気中CO2の削減が期待されている理由である。しかし、ここで植物を栽培するプロセスが重要であり、植林なしに単に山の木を伐採して燃料利用するだけであれば化石燃料を浪費する行為と大差はない。バイオマス生産を行うことそのものがカーボンニュートラルであることを忘れてはならない。ここ1、2年のバイオマス燃料に対する関心の高まりは目を見張るものがある。農林水産省においても2007年度から「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発」プロジェクト研究が開始した。このプロジェクトは、国産バイオ燃料の利用促進を図るために、サトウキビ、テンサイ(甜菜)、バレイショ(馬鈴薯)、カンショ(甘藷)およびソルガムを原料にしたバイオエタノール生産コストを大幅に削減する技術を開発し、実用化することが目的であり、政策目標として、国産バイオエタノールの生産コストを10年で現在の半分以下に削減することを目指している。この中で草本系イネ科植物として対象作物に選ばれているのが熱帯イネ科作物(C4植物)のサトウキビと高糖性ソルガム、すなわちスイートソルガムである。

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