著者
田口 知弘
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学一般教育紀要 (ISSN:13413589)
巻号頁・発行日
no.34, pp.67-88, 2009-01-31

今回は語学や文学に関わる分野の人々がどれほど言葉によって社会と格闘をしているか、言語に関係してきた者の一人として責任を感じている。時代に向けて何を伝えたいか。ここに言葉の本質、環境、自然保護、医療現場での医師と患者の関係などを列挙した。言葉を介して人が人と関わって生きていく言語表現とは何か。ここ数年、地球温暖化に警鐘を鳴らすドイツの現状を捉え、現在の環境問題に見られるドイツ語彙と文章に視点を当ててみた。とくにドイツは環境政策に大きな比重を置いており、それに関連する語彙増大は顕著である。EU の環境政策課題から発信されている多くの環境語彙は同じ地球上に住む人々にとって重大な意味が含まれている。語学に携わる者が社会貢献しているか、人々の生きる糧になっているか、思い当れば限りなく自分自身の社会的貢献度の低さを感じている。なぜここでこんな問題を取り上げるのか。言語に携わる者の使命として言語学分野の枠を越えるべきと問い始めたからである。もう一度人間の生きる原点に一歩踏み込み、生活者の立場からその言葉の重要性を吟味すべきと考えた。言語研究も一貫した研究が大切ではあるが、いま人類が悲鳴をあげ生き抜くために苦慮している。人は現実を直視し、日常生活に直面している社会認識から掛け離れてしまっては意味がない。日常性の中で生まれる社会認識に入り込んでいかなければならない。あえて今回《社会を利する言葉の力があるのか》を取り上げた。様々な言語作用から生み出された言葉の本質、環境問題、緩和医療を中心に文章と語彙を摘出し論及してみたい。

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