著者
仲野 好重 桜本 和也
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.177-195, 2009

大学の初年次教育の一環として「自分探しの心理学」という科目を位置づけ、それを履修する大学一年生の自己認識に対する精神的変化を量的および、質的に分析することを目的においた。関西にある共学の四年制大学で上記の科目を履修している大学一年生100名に対し、学期の初めと終わりに、(1)自己肯定意識尺度、(2)自己受容測定尺度、(3)多次元自我同一性尺度を実施した。また、毎授業の終了時に、学生は授業内容に即したコメントメモを提出し、その日の授業で学んだことがらを中心に、自己の内面を見つめる機会が与えられた。これらの3尺度の結果とコメントメモの内容から、学生たちの自己意識の変容を分析した。まず3尺度すべてにおいて、授業開始時に比べて終了時では、平均値の有意な上昇が認められた。すなわち、本講義を受講した学生たちは、自己肯定意識、自己受容、及び自我同一性の形成において有意に促進されたと考えられる。その要因はこの授業だけにあるのではなく、学生生活におけるさまざまな体験が複合的に作用していると考えられるが、自分探しに焦点をあてた授業内容が何らかの精神的変化の契機になっていたのかもしれない。また、コメントメモから得られた質的データは、学生の心の動きを詳細につかむ助けとなっており、自己の肯定的側面の発見や自己受容がうながされた授業の直後には、大きな心理的変化を示す学生が多数存在していた。

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