- 著者
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田中 耕市
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.33-48, 2009
- 被引用文献数
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モータリゼーションに伴う公共交通機関の衰退によって,日本の中山間地域では自家用車を運転しない高齢者の生活利便性が著しく悪化している.おりしも,2001年の補助制度改変と2002年の規制緩和によって,交通事業への参入と撤退の自由度が高まったため,不採算地域における交通サービスの維持方法が問題となっている.本研究では,中山間地域における公共交通が抱える問題を明らかにして,今後の地域交通手段のあり方について考察した.特に,中山間地域の多くがこれまで依存してきた乗合バスと,それに対する代替交通手段に注目した.近年は,自家用車を運転する高齢者の割合も高くなりつつある一方で,高齢者の交通死亡事故も急増しており,公共交通機関の維持が必要である.規制緩和直後の乗合バスの廃止路線数は予想されたほどではなかったが,JRバスグループを中心に中山間地域からの事業撤退が展開された.また,補助制度の変更に伴って,市町村内で完結する路線の撤退が相次いだ.乗合バス路線の廃止後には,自治体補助によるコミュニティバスやコミュニティ乗合タクシー等が運行されることも多かった,しかし,コミュニティバス以外にも,デマンド型交通や有償ボランティア輸送等の代替交通の可能性もあり,中山間地域ゆえの地域特性を考慮したうえでの選択が必要である.自治体の財政は逼迫していることもあり,代替交通は効率的な運営が求められ,運行システムの構築が肝要である.その際には,住民へ提供する交通サービスのシビル・ミニマムをどこまでに設定すべきかの自治体判断も深く関連する.自治体は事前に地域住民のニーズとその特性を把握する必要がある一方で,地域住民も自ら代替交通の計画段階から参画することが,代替交通サービスの成功への鍵となる.しかし,将来的には,人口密度のさらなる低下から,交通サービスのシビル・ミニマムに関する問題の再燃は避けられない.各自治体と無住化危惧集落の住民との相互理解が重要である.