著者
岡田 聡
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.127-151, 2010-06-30

サルトルによれば、実存主義は実存を強調するので「私が代表する無神論的実存主義はより論旨が一貫している」。ヤスパースは、どのような論理で、実存を強調するにもかかわらず超越者について語ったのか。本稿では、一性という点での実存と超越者の相即性について考察する。多なるものから一なるものを選択するという主体的で自由な決断を下す者は、自己存在を散漫状態から一性へともたらすことによって自己自身を獲得する。一性は実存それ自身の根本特徴である。また、超越者とは「あらゆるものの根拠としての一なる存在」であり、一性は超越者の根本特徴でもある。ヤスパースによれば、「私は超越者の一なるものにおいて私の本来的な自己存在を見出す」のであり、実存するとき、一性という点での実存と超越者の相即性が示される。しかし、実存の一性と超越者の一性とは本質的には異なるのであり、実存と超越者の相即性は、両者の最大の近さと最大の遠さの矛盾のうちに成り立つものなのである。

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