- 著者
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上田 朋宏
- 出版者
- 京都市立看護短期大学
- 雑誌
- 京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, pp.3-7, 2010-05-31
高齢者の排尿障害の特徴は,加齢自体に寄る膀胱の機能低下と加齢に伴う複合障害による膀胱機能の外からの修飾により複雑な病態を呈する事が多い.しかも,加齢により排尿障害リスクが増加する合併症(癌,糖尿病,脳血管障害,骨盤内手術)の管理が優先され,本来高齢者の尊厳に関わる排尿が何の評価も受けず放置されてしまう事も少なくない.高齢者の排尿管理はおむつやバルーンカテーテルに依存しやすいが,継続可能な排尿管理体制を構築すれば検尿,残尿測定,膀胱の活動性の評価に基づく薬物治療で十分排尿自立まで導きその状態を維持することができる.世界一の長寿国の日本の未来は高齢者の排尿管理にかかっているといっても過言ではない.その第一歩は高齢者の排尿障害を「歳のせい」としてあきらめず医療職・介護職として向き合うことだと思われる.