著者
竹田 直樹 八木 健太郎
出版者
環境芸術学会
雑誌
環境芸術 : 環境芸術学会論文集 (ISSN:21854483)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-7, 2009-03-31

彫刻設置事業における既成作品購入型とは、既成の作品の中から適切なものを選択・購入し、設置するという、きわめてシンプルな作品選択の方法である。この方法では、原理的に作品内容の中に設置場所との関連性は含まれず、設置される作品の内部にサイトスペシフィシティーは必然的に生じない。本論では、最初に計画的で継続的な彫刻設置事業に既成作品購入型の作品選定システムを取り入れた1973年からの長野市、その前後に行われた旭川市の設置事業、そして1978年から81年にかけて横浜市により大通り公園で実施された設置事業を分析対象とした。なお、この分析過程において、田村明の言説は重要である。その結果、既成作品購入型は、モニュメント性が希薄な作品が得られるという点で、自由主義社会にふさわしい作品選定方法として捉えられていたことがわかった。しかし、冷戦が終結し、バブル経済が崩壊した後の社会では、それは意外にも「自由主義の推奨する芸術」を賛美し、あるいは「高価で贅沢な商品」を賛美するモニュメントに変質してしまった可能がある。

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