著者
ヴァカン ロイック
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.72-86, 2010-10-01

本稿では,この10年間に先進社会に広がった厳罰化を予見していたPrisons of Povertyの国際的な反響を省察する.そして,Prisons of Povertyが1999年に察知していたアメリカ発の世界に拡大する「法秩序」の嵐はいまだに広範囲にわたって猛威をふるっていることを紹介する.実際,その嵐は第一世界から第二世界の国々へと広がり,約15年前には誰もが予想しえなかった,ありえないと考えていたやり方で,世界中の刑罰政策を刷新してきた.本稿では,ラテンアメリカにおいてアメリカ式犯罪取締の観念と妙策が拡散する過程で,シンクタンク(とくにマンハッタン・インスティチュート)がはたした役割を詳細に検討する.それは,貧困の犯罪化を生み出す市場優先の総合政策が国際的に循環していることを呈示する.そして,ネオリベラリズムと厳罰のつながりにかんする従来のモデルを吟味し,修正をくわえることになる.これは拙書Punishing the Poorのなかで展開された社会不安の時代における国家形成の分析へとつながる.

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