著者
坂井 健
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.100-117, 1998-10-03

『野の花』論争で花袋が主張したいわゆる「大自然の主観」の論は、従来いわれている『審美新説』よりも、ハルトマンの美学の影響によって成り立っているものである。花袋は、ハルトマン美学を高瀬文渕に触発されて受容したため、その理解も文渕色の濃いものとなった。すなわち、冥想と人生修養の重視である。花袋は、ハルトマンの「小天地説」と文渕の「意象」の説とによって、「大自然の主観」の説を形成したと見られるが、その際、作者の主観を人生経験と修養によって徐々に進めていけば、「大自然の主観」に近づくことができると考えたので、冥想にこだわる必要がなくなり、修養がもっぱら重視されることとなった。ここに宗教色の濃い日本自然主義の源がある。

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