著者
西原 尚之
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-97, 2006-03-31

本論は経済的不利を伴う家庭で生活する不登校児の実態を明確にし,支援の方向性を示唆した研究である.そのため最初に福岡県筑豊地域の民間フリースクールに通級する子どもたちの現状を紹介した.この地域の生活保護率は全国の10倍以上に上り,通級児たちの家庭もその過半数が生活保護世帯である.また彼らの多くは学力が大幅に低下しており,たとえ学校に復帰してもこのうち7割が通常の授業についていけない状況にある.またひとり親家庭(42%),親が精神または知的障害を伴っている家庭(25%)も多い.本論ではこうした社会的不利をかかえる家庭で生活する不登校児たちの中心課題を教育デプリベーションと位置づける.そのうえで必要な支援として,多層な補償教育システムの配備を提言した.また補償教育システムが有効に機能するためには親との協働が欠かせないという視点から,家族に対するアプローチについても検討している.

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