著者
浅尾 広良
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-46, 2010-11-27

『源氏物語』桐壺巻の巻末近くには、二人の皇女の婚姻が語られている。しかも二人は皇統の尊貴性を担う后腹内親王であり、物語はこうした皇女の婚姻を全体の舞台設定として語るのである。そもそも、律令制度下において皇女の婚姻は厳しく制限されていた。それは皇女が皇位継承において重要な役割を果たして来たことに由来する。そのために皇女不婚の原則は何百年にも亘って守られてきたが、平安時代に入るとそれが少しずつ崩れてくる。しかし、そうであっても天皇の意図に従い、皇女は相変わらず天皇家の権威保持にとって重要な役割を果たしたのである。歴史的に見ると、皇統が交替し、天皇の権威が危うくなった時に、皇女を使った皇統の権威化と臣下との紐帯強化が繰り返し行われてきた。物語の二人の皇女の婚姻は、天皇のおかれた裏面の事情を想像させる。

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