著者
大明 敦
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.215-231, 2011-03-01

宮沢賢治の代表作の一つとされる『銀河鉄道の夜』の主要な登場人物であるカムパネルラについては、夭折した妹・トシや学生時代の親友・保阪嘉内などがモデルとして取り上げられてきた。本稿では、菅原千恵子・蒲生芳郎の両氏らによって提唱された保阪嘉内をモデルとする説への疑問について考察すると同時に、そこから『銀河鉄道の夜』の創作意図を考えてみようとするものである。『銀河鉄道の夜』は菅原氏がいうように「賢治が終生、嘉内に送り続けたラブコール」といった個人的な作品ではなく、ジョバンニのような境遇にある多くの読者に自らのメッセージを伝えるために書かれたものと考えられる。それは、『銀河鉄道の夜』が今なお多くの読者に親しまれている要因の一つなのではなかろうか。

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