著者
橘高 眞一郎
出版者
佛教大学
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.57-71, 2011-03-01

人間の言語活動の最も重要な産物の一つが文学である。しかし、文学性とは何かと問われると、途端に返答に窮してしまう。現在のところ認知科学では、文学性とは一般的認知機構の阻害克服過程で読者の心中に喚起された審美的感情群と考えられており、その過程を説明するずれの解消モデルが提唱されている。本稿では、主にユーモアやジョークを分析対象としているこのモデルをベースに、文学作品中の言語表現によるメトニミー・リンクが喚起する複数のドメインのブレンディングによる日常的推論からの意図的なずれが認知的負荷を与え、焦点シフトによるずれの克服過程で審美的感情群が生じると論じて、文学作品解釈の認知図式を提示する。文学作品解釈の背後には、認知的無意識とでも言うべき複雑な認知プロセスがあるが、メトニミー・リンク、ブレンディング、焦点シフトは、そうした認知プロセスの一部として機能している。

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