著者
宋 基正 宮崎 清 朴 燦一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.37-46, 2011-01-31

本小論では、全羅北道淳昌郡において2005年から展開されている地域革新体制(RIS:Regional Innovation System)に関する現地調査に基づき、当該地域の伝統的生活文化を活かした内発的地域振興計画の特質を考察したものである。伝統的な醤類づくりを基底に据えた淳昌における地域づくりは、以下の特質を有している。1)淳昌では、当該地域の自然・風土のなかで育まれてきた韓民族の伝統食文化である醤類産業を淳昌のアイデンティティーととらえ、その生活文化の産業化を通した地域振興が展開されている。2)核家族化の進行につれてかつての醤類の自給自足形態が脆弱化したことにより、住民-自治体-中央政府の連携的事業展開がなされてきた淳昌の伝統的醤類産業は、今日では韓国における不動の醤類産業としての地位を淳昌にもたらしている。3)淳昌における醤類産業を基底に据えた地域振興が今後とも持続的に展開・進展していくためには、醤類づくりの原材料生産を協働して実施する地域住民の意思と実践、ならびに、その協働を基点として形成される人びとの醤類に対する価値認識の共有化が不可欠である。

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