- 著者
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趙 景達
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, no.4, pp.889-909, 2011
植民地朝鮮において、天道教(新派)は大きな役割を果たした。文化運動や啓蒙運動を積極的に行い、民族運動の主役も占めたといえる。しかし、その運動は終始協力的であった。そして、朝鮮の植民地化は他者=日本の問題ではなく、朝鮮人の民族性に問題があるとして、民族改造を唱えた。天道教の民族主義は端的にいって文化的民族主義と評価することができる。こうした天道教は文化と啓蒙に執着するがゆえに、勢い民衆の主体化をおろそかにした。そこで、一九二〇年代の終わり頃に民衆向けの通俗的な教理書である『天道教理読本』の刊行が意図された。しかし、総督府から大幅な検閲削除を受け、その刊行はならなかった。以降、天道教はますます穏健化し、戦争協力の道を進んでいくことになる。