- 著者
-
門田 園子
- 出版者
- アート・ドキュメンテーション学会
- 雑誌
- アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
- 巻号頁・発行日
- no.15, pp.33-46, 2008-03-31
- 参考文献数
- 15
二十世紀前半に活躍した国際的美術商である山中商会については、近代美術市場史を語る際にしばしば言及されてきたが、商会によって実際にどのような物品が、どの程度の数海外に渡り、現在どのような形で残されているのかについては依然として不明な点が多い。本稿は山中商会ロンドン支店の足跡を辿る事例研究であり、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム・アーカイブが保管している登録ファイルをもとに、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムの東洋美術コレクションのうち、山中商会が関わった作品について明らかにする。登録ファイルは1910年から1932年の間に山中商会ロンドン支店とヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムで交わされた文書からなり、購入にいたった作品には所蔵番号が付与されているため、所蔵状況を確認することができる。本研究はアーカイブ資料を用いた美術研究の有用性を示すとともに、ミュージアムという公的な場でいかに東洋美術のコレクションが形作られてきたかを、その担い手であったディーラーと専門学芸員の交渉過程から検証する。