著者
松崎 博子 黒瀬 知子
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.49-59, 2022-05-31 (Released:2023-06-02)
参考文献数
58

就実大学・就実短期大学図書館では、寄贈により受け入れた倉敷考古館旧蔵書の整理作業を進めている。倉敷考古館において蔵書目録は作成されていなかったため、まずは寄贈資料の同定識別作業および重複調査、所蔵調査をおこなった。寄贈資料の大半を占める発掘調査報告書を検索するに当たり、国立国会図書館および国立情報学研究所のデータベースと併せて、奈良文化財研究所のデータベース「全国遺跡報告総覧」が有用であったことを述べる。発掘調査報告書を発行する自治体や教育研究機関、データ登録をおこなう参加機関とは異なる立場から大学図書館における発掘調査報告書整理作業の背景と状況、今後の課題について事例を報告する。
著者
門田 園子
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-46, 2008-03-31
参考文献数
15

二十世紀前半に活躍した国際的美術商である山中商会については、近代美術市場史を語る際にしばしば言及されてきたが、商会によって実際にどのような物品が、どの程度の数海外に渡り、現在どのような形で残されているのかについては依然として不明な点が多い。本稿は山中商会ロンドン支店の足跡を辿る事例研究であり、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム・アーカイブが保管している登録ファイルをもとに、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムの東洋美術コレクションのうち、山中商会が関わった作品について明らかにする。登録ファイルは1910年から1932年の間に山中商会ロンドン支店とヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムで交わされた文書からなり、購入にいたった作品には所蔵番号が付与されているため、所蔵状況を確認することができる。本研究はアーカイブ資料を用いた美術研究の有用性を示すとともに、ミュージアムという公的な場でいかに東洋美術のコレクションが形作られてきたかを、その担い手であったディーラーと専門学芸員の交渉過程から検証する。
著者
赤間 亮 波多野 宏之 本間 友
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.27.28, pp.18-33, 2020-05-31 (Released:2021-06-23)

本稿は、JADS 30周年記念企画行事 第12回秋季研究集会(2019年11月16、17日)の2日目に行われた鼎談の記録である。鼎談においては、JADS創設に関わった初代幹事長/初代会長・波多野宏之氏を迎え、JADSの歴史、アート・ドキュメンテーションの必要性、対象とするアートの範囲について活発な議論が交わされた。
著者
大絵 晃世
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.36-55, 2019-05-31 (Released:2020-06-16)
参考文献数
59

東京・中央区銀座に、「三原橋地下街」という建築・地下空間が存在した。堀川に架かる「三原橋」という橋の下にできたこの地下街は、老朽化により閉鎖が決定し、2014年に外観の取り壊し工事が開始された。大正の震災復興、戦後の瓦礫処理・区画整理といった、銀座の街の変容とともに三原橋は様々に形を変え、人々に利用されてきた。本稿は、三原橋地下街に関係する資料と筆者が収集したオーラル・ヒストリーを中心に、同地下街の歴史性と、都市における文化的な役割・特徴を明らかにすることを目的とする。インタビューの分類・分析を行いながら、今は形なき地下街を都市の変遷と共に捉え直してみたい。
著者
筒井 弥生
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.11, pp.74-84, 2004-03-31

This article reports how the donated items were organized to be documented and digitized based upon the presentation at JADS 40th workshop in Kumamoto on June 7, 2003. It also discusses the difficulties in the process of documentation and database construction such as notation system, translation, and intellectual property issues. This collection by Dr. Shigeyasu Hasumi includes more than a thousand photos of ancient Japanese sculptures and Asian paintings, especially focused on Sesshu. It now belongs to the University Museum, the University of Tokyo, where the author did her internship as a candidate for the Museum Studies Certificate program at Harvard University.
著者
植野 健造
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.14, pp.18-23, 2007-03-31

The author has been considering the importance of the newspaper article as a staff in the museum of modern art or a researcher of the history of Japanese modern art. This paper draws attention to some cases with the investigation of the newspaper article related to the art, and especially three cases that the author has tried up to now. 1. practical use of the newspaper clipping scrapbook kept by the Ishibashi Museum of Art, 2. Research of Hakubakai group and the newspaper article, 3. A modern art of Yanagawa, Fukuoka Prefecture appeared to The Yanagawa Shinpo newspaper. This paper, thus, explores the profit and the necessity of the investigation of the newspaper article by the project.
著者
土屋 伸夫
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.13, pp.30-43, 2006-03-31

In this study I focus on the six hundred temporary exhibitions held for forty years by the Design Gallery 1953 of Matsuya Department Store in Tokyo. The aim of this paper is to examine the importance of the exhibition data which is composed of the images of the invitation postcards of each exhibition in order to study the history of modern design in Japan. We can employ the results shown in this study to make the social role of those exhibitions clear from the point of view of the Art Environment Support.
著者
増田 久美
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.28-32, 1999-09-30 (Released:2023-05-01)

Artworks may be restored repeatedly to preserve them for a long time. Records of its restoration are useful when an artwork is retreated thereafter. The Sokei Institute of Painting Technology has made a research report of each artwork when it is restored. The report includes the descriptions and photographs which show the condition of the artwork and restoration process in detail. Each restorer carries out entire process: restoration and keeping a record of the treatment. Therefore, the photograph file should be able to be organized by more than one restorer, and to be available to all staff members of the Institute. The method for organizing the photograph file has been established since the Institute was founded, by the staff who recognized the importance of photographs in restoration artworks. A future problem is how to keep an increasing number of photographs. Digitization is considered to be the most promising way to save the space and to make these materials more accessible.
著者
研谷 紀夫
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.15-30, 2017-03-31 (Released:2021-06-25)

幕末から戦前期まで活躍した写真師や写真館に関する研究が進展してきたが、営業写真師や写真館に関する研究は現在発展途上であり、どのような資料を調査対象としてどのように整理と情報化を進めていくかについて検討を進めていく必要がある。そのため本研究では、明治から大正にかけて活躍した、冨重利平、小川一眞、丸木利陽に関係する写真資料を比較検討し、営業写真師や写真館に関する基本構造を分析する。その上で、営業写真師や写真館に関する資料は「(1)どのようなところに所蔵されたどのような資料を対象に調査をすべきか」、「(2)資料に関してどのような情報を取得し継承していくべきか」の二点について明らかにする。そのことによって、写真師関係資料を調査していく場合の調査範囲と情報化に関する新たな基本指針を提案する。
著者
逢坂 裕紀子
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.18-32, 2016-03-31 (Released:2021-06-25)

本論は、東京国立博物館が所蔵する館史資料『大震災関係書類』を対象に、いわゆる博物館業務において優先される収蔵品や展示に関するものではない資料や情報が、近年謳われる“地域連携”志向において、地域との関係性を示す資料としてどのように活用されうるかを明らかにすることを目的とする。それにより従来の博物館研究において、いわゆる展示や収蔵品といった優先度の高い情報ではなかったためにあまり焦点があてられてこなかった資料を、博物館の社会的・歴史的位置や地域との関係性を示す資料として捉え直し、博物館資料のさらなる活用可能性を提示する。
著者
毛利 仁美
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.17-33, 2021-05-31 (Released:2022-06-11)
参考文献数
78

ゲーム研究における小学館の学年別学習雑誌(学年誌)が有する役割を分析するという目的のもと、本稿では、雑誌の編集方針と編集者のインタビューが掲載されている書籍やwebページ、ビデオゲームの記事を分析した。ゲームが雑誌に掲載される前に、学年誌の「学習」の性質が変容し、学年誌が娯楽記事編集ノウハウの蓄積と、小学生という読者に特化した雑誌編集体制の構築の場となったことを確認した。学年誌は、電子ゲームとビデオゲームをゲーム専門誌の創刊以前より掲載していたことが明らかとなり、ゲーム研究における学年誌の意義と役割は、現時点では、子ども、大人(家庭・学校)、産業とビジネスの3つの側面があると考えられる。
著者
渡邉 美喜
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.12-26, 2011-03-31 (Released:2021-06-25)

百貨店を会場とした美術展やそれに類する文化的な催事は、日本の美術界特有の現象であると指摘されてきた。しかしながら百貨店を会場として、美術作品を展覧することが目的のもの(美術館的催事)と、美術作品を販売することが主たる目的である催事(画廊的催事)がともに行われ、またこうした催事が行われるに際し、いかなる組織が百貨店の内と外で関与しているかに対して、あまり関心が払われていない。 そこで本論文は、百貨店の催し会場の仕組みを明らかにしたうえで、百貨店内の一つの組織が単独で運営する美術画廊催事に着目した。髙島屋美術部を事例にとり、歴史的な経緯とこれまでの髙島屋刊行物に記載された活動記録について検討を行う。さらに今日、髙島屋美術部で生み出されている記録類を明示し、それをもとに網羅的な催事記録を作成した。年間における催事の頻度、制作物の数などをまとめ、百貨店美術部の活動を考える上での基盤資料の構築を試みた。
著者
恵光院 白
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-69, 2005
参考文献数
46

This essay is a short biography and a rough draft of Okisada ASAOKA (Obsolete name: Nobuyoshi KANOU, 1800-1856). His name is not included in any encyclopedias of art as a heading, except that only a short reference by an compiler under the heading of "[Zotei] Kogabikou: Remarks to the Old Painters, [Additional edition]" is found in some materials. His detailed profile is never known under the present situation. Regretting the fact, I have been working on the research of this unknown Compiler. The essay below is not based on all of the original texts and materials (archives), and I expect that his profile would be further studied and the original texts and materials would be fully explored.
著者
大絵 晃世
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.36-55, 2019

<p> 東京・中央区銀座に、「三原橋地下街」という建築・地下空間が存在した。堀川に架かる「三原橋」という橋の下にできたこの地下街は、老朽化により閉鎖が決定し、2014年に外観の取り壊し工事が開始された。大正の震災復興、戦後の瓦礫処理・区画整理といった、銀座の街の変容とともに三原橋は様々に形を変え、人々に利用されてきた。本稿は、三原橋地下街に関係する資料と筆者が収集したオーラル・ヒストリーを中心に、同地下街の歴史性と、都市における文化的な役割・特徴を明らかにすることを目的とする。インタビューの分類・分析を行いながら、今は形なき地下街を都市の変遷と共に捉え直してみたい。</p>
著者
福田 博同
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.24-37, 2004
参考文献数
10

In this paper I attempt to clarify the following: first, the proper data collection range for a fine-arts related web site, and second, a good method for constructing a web site which efficiently displays the information which should be exhibited. Many web sites move or disappear. How should a fine-art related web site, which must treat such changing information, be constructed? I propose the following method is a good one. That is, it is a method for bringing together the data transferred, using the database function of Excel in one place, and maintaining only the data. Next, it is changing the CSV data into an HTML file using VBA. I explain the reason for making it an HTML file, using not XML but VBA. Finally, an example of a JADS site describes the procedure of data conversion.
著者
丸川 雄三
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.62-74, 2020

<p> 近代日本の身装文化「身装画像データベース」のウェブAPIについて詳述する。研究資料デジタルアーカイブズの情報管理と公開ではシステムに求められる要件が大きく異なる。本研究では、「身装画像データベース」におけるそれぞれのシステムの独立性を高く保つための方策としてウェブAPIを独自に開発し実証した。さらにウェブAPIの仕様および運用状況を詳細に検証することで、設計および運用上の課題を確認した。</p>
著者
和久井 遥
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.43-52, 2018

多様な記録メディアが普及していく中、博物館でも日々の業務・研究で様々なデジタルデータが作成され、記録メディアに格納・蓄積されている。東京国立博物館(以下「当館」という)では所蔵品の画像データはユニークナンバーを付与され体系的に管理されている。しかしその他にもコンテンツ作成などの単発の業務・研究で作成されたデータや、他部署で作成されたデータのコピーなど、体系的に管理されていないデータも多い。これらのデータを保存している記録メディアは放置されがちであり、内容を把握している職員も少ない。本稿では、組織内に散在する記録メディアを把握して適切に記録をとり、長期的な保存にむけて管理する手法について提案する。
著者
村田 良二
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.49-60, 2004-03-31 (Released:2018-04-10)
参考文献数
12

The CIDOC Conceptual Reference Model (CRM) is a formal ontology to enable information integration and exchange for cultural heritage data. Today's museums' disparate, localized information can be transformed into global information resource by using ontology such as the CIDOC CRM. But museum experts may find that ontology is not familiar to them. This paper introduces the key concepts and functions of the CIDOC CRM, and shows how to model museum information with examples.
著者
研谷 紀夫
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.19-32, 2008
参考文献数
19

近年、博物館、図書館、文書館の類縁機関や異なる博物館相互の連携などが唱えられているが、これらのデータ連携には既存の施設の目録データの統合が必要不可欠である。それらに際しては、各館で独自の目録データ形式を採用してきた各博物館や文書館の目録形式の歴史とその変遷を捕らえる必要がある。特に前者の博物館においては明治以来の伝統があり、わが国独自の目録規則を作成してきた経緯が存在する。そのため、本研究では戦前の博覧会及び九鬼隆一が総長であった時期を中心に帝国・帝室博物館の目録情報の発達の経緯を調査し、今後の文化資源情報化のあり方を展望する。
著者
高橋 晴子
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-18, 2008-03-31 (Released:2018-04-10)
参考文献数
11

本稿は、近代日本の<「身装-身体と装い」画像データベース>のための、重要なデータソースである新聞連載小説挿絵の身装情報としての資料価値について述べている。まず、小説挿絵の評価のための前提条件となる挿絵画家の位置付けと技術について言及した。1900年以後には、日本画家で占められていた挿絵の世界に西洋画家が参入し、さらには社員の身分であった挿絵画家がフリーの身分に変化してゆく。また、技術的には、写真製版などの新しい技法が加わった。これらのことが要因の一部となり、浮世絵様式の明治期前半の挿絵が、1900年以降になると、陰影感をもったリアルな姿態や、豊かな表情などが表現されるようになる。このような変容をとげた挿絵の信憑性を確認しながら、本画像データベースにとって、同時代の挿絵が適切な画像資料であることを検証した。なお、本画像データベースは、約1万件の画像で構成する予定でいるが、画像データの約40%は挿絵が占めることになる。