著者
中道 圭人
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.228-239, 2011-09

幼児の反事実的推論に因果関係の領域が及ぼす影響を検討した。実験1では3-5歳児(N=74)を対象に反事実課題を実施した。反事実課題では,幼児に初期状態⇒原因事象⇒結果状態からなる因果関係を含んだ物語を提示し,その因果関係の原因事象が異なっていたら結果状態がどのように変化するかを尋ねた。因果関係には3つの領域(物理・心理・生物)があった。その結果,年少児より年中児・年長児で,物理的領域より生物的領域で,その2領域より心理的領域で推論遂行が良いことが示された。実験2では3-5歳児(N=30)を対象に結果選択課題を実施した。結果選択課題では,3領域それぞれに関して,ある原因事象を提示し,その結果状態がどのようになるかを尋ねた。その結果,結果選択に関して領域による遂行差は見られず,反事実的推論の領域による遂行の違いが実験1で用いた因果関係に対する理解の違いに起因するのではないことが示された。これらの結果は,反事実的推論能力が4-5歳頃に向上すること,その能力には領域に関する何らかの制約が影響している可能性を示唆している。

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