著者
寺坂 明子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.298-307, 2011

怒りには複数の側面があり,攻撃的な行動の背景には慢性的な怒りが存在することが知られている。本研究では,児童期・思春期における怒りについて,慢性的な怒りを含めた多次元的な構造とその特徴を検討した。慢性的な怒りについては認知的側面である敵意と情緒的側面であるいらだちから捉え,怒りの多次元的測定にはMultidimensional School Anger Inventoryのうち怒り体験と怒り表出も併せて用いた。研究1では小学5・6年生を対象に調査を行い,怒りの多次元的特徴と妥当性を検討した。研究2では研究1と同集団に対する追跡調査(中学2・3年時)を行い,怒りの多次元構造と発達的変化を検討した。調査の結果から,いずれの時期においても慢性的な怒りを含めた怒りの多次元構造が示され,慢性的な怒りが破壊的表出と関連しやすいことが示唆された。また,積極的対処以外の怒りの各側面で小学生時よりも中学生時で高いことが示された。変数間の関連,教師による行動評定との関連からは,男女で表出の在り方が異なると考えられた。

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